* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

海底三百ミリメートル・知識編 [7]
「苔」について(3)
〜 藍藻(シアノバクテリア) 〜

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

水槽で魚の飼育をしている人がだれでも悩むのが水槽の中に生える「苔」です。
水槽での魚の飼育と「苔」とは、切っても切れない縁だとも言えるでしょう。

この「苔」については、私自身はあまり詳しくはありません。
専門的な立場から詳しく解説されたホームページも公開されていますので、
詳細はそちらのページ(
こちら→ )をご覧いただくとして、
このサイトでは水槽内でポピュラーな3種類の「苔」のそれぞれについて、
基本的な知識と、実践的な対処法をご紹介します。

最後にちょっとやっかいな「藍藻(シアノバクテリア)」について説明します。

なお、ここでは海水魚飼育者の慣例に従って「苔」と呼びますが、水槽内に生えてくる「苔」は地上に生えるスギゴケやゼニゴケとは違う仲間で、海藻などと同じ「藻類」に含まれる植物なのだそうです。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

どんな「苔」か
  濃い紅色や同じく黒に近い濃い緑色の、厚みのあるベタっとした{「苔」です。LRの上や、底砂の上に生えます。底砂の上のものなどはやや鮮やかな紅色をして、スライムのように見える事もあります。
手ではがすと簡単に剥がれますが、「茶ゴケ」のようにバラバラに溶ける事はなくて、ベリッと剥がした時の膜状のまま、水流に乗って流されてしまったりします。
「藍藻」とは言うものの、「珪藻(茶ゴケ)」や「緑藻(緑ゴケ)」とは異なる「原核生物」に属する生物だそうで(他の「藻類」は「真核生物」)、何でも地球上で一番最初に光合成をして酸素を産み出して、今の地球環境を作り上げてくれたとか、地球上で一番古い化石はこのシアノバクテリアのもの(ストロマトライト)であるとか、そういう有り難い(?)生き物でもあるそうです。

基本的には古い水槽、古い飼育水で出る事が多いと言われています。また、人工乾燥餌を使用するよりも、冷凍ブラインシュリンプやアサリなど、生の餌を使っていると発生しやすいとも言います。
「藍藻」と一言で言っても種類は沢山あり(他の藻類もそうですが)、赤潮の原因になるものなどは毒素も持っているそうですが、水槽内で発生する固着タイプの藍藻の場合には、直接、悪影響があるとは思えません。

ただし、やはり水質が良くない場合の発生が多いので、藍藻が発生した場合には、水槽の濾過能力の見直しなども検討するのが良いと思います。海水魚ショップなどに「苔が生えた」と言うと「換水しろ」と言うのは、この藍藻の発生を念頭に置いているのだと思われます。

   
発生の原因
  主に魚の餌等に含まれる燐酸塩の蓄積が発生の原因と言われています。ただし、燐酸塩の少ない水槽でも発生する事もありますし、燐酸塩が減っても減らない事もあるなど、一筋縄では行かない感じです。種類によって異なる条件で発生するのかもしれません。

しかし、とにかく燐酸塩の蓄積は良い事ではありませんので、燐酸塩が蓄積しないように、一所懸命換水したり、燐酸塩の吸着剤を使用するなどして予防することが望ましいと思います。

「生餌が良くない」と言うのは、人工資料よりもリン分が多い傾向にあるためです。また、鉄分が多いと発生しやすくなりますので、生餌に含まれる血液の鉄分が良くないということもあります。

   
対策
 
1. 掃除
  掃除だけでは中々追いつかないかもしれませんが、掃除自体は難しくはありません。
手でベリベリと、剥がす事が出来ます。ただし水流が当ると千切れて流れて行ってしまう事もあるので、注意して下さい。
LRの上に発生したものなどは、古い歯ブラシなどでゴシゴシもこすり落して構いません。
   
2. 生物兵器の投入
  淡水の場合には藍藻を食べる魚がいるようですが、海水の場合には、魚でも甲殻類でも、この藍藻を好んで食べると言う話を聞いた事はありません。ホシダカラなどのタカラガイが好んで食べると言うお話を聞いた事がありますが、私自身では確認できていません。そもそもホシダカラ自体、あまり商業流通していないと思いますので、その点でも苦労するかもしれませんね。

    [追記]
このサイトを公開後、我が家の「三百ミリメートル水槽」にも藍藻と思われる赤いべったりした苔が発生しましたので、最初はメダカラ、次にはハナビラダカラを投入したところ、特にハナビラダカラの投入後、急激に藍藻が減少しました(2004年05月。くわしくはこちら、5月中旬頃からの記録をご参照ください。)。

メダカラの投入後にはメダカラがLR上の藍藻の部分にいたのを確認しましたし、ハナビラは底砂の上をよく歩き回っていて、その後底砂の上の藍藻もなくなりましたので、これらのタカラガイが我が家の水槽の藍藻を食べている可能性があると考えています。
その後、水槽内で藍藻を見る事はありませんが、外掛けフィルターのフィルターケースの裏側には、依然、藍藻が発生しています。つまり水質自体は変わっていないにもかかわらず、水槽本体の藍藻は消滅しているのですから、水槽内にいる生物(ハナビラダカラなど)が、藍藻を食べているのだろう、と、私は判断しています。

ただし、全てのメダカラ、ハナビラダカラが、全ての藍藻を食べるのかどうか、また、もし食べるとしてもどの程度食べるのか、私には確認出来ていません。もしこれをご覧の方で、水槽内に藍藻が生えており、かつ、これらのタカラガイを入手可能な場合は、是非トライしていただいて、事例をご紹介いただければ、ありがたいと思います。
   
3. 原因物質の除去
  藍藻の場合には特にこの対策が中心になると思います。単純に言うと、濾過の強化と生餌(冷凍ブラインなども含む)を使用しない事、蓄積した燐酸塩の除去、この3つです。

特に生餌については、藍藻の発生の原因は生餌だと断言しているサイトもあります。生餌よりも人工乾燥餌の方が栄養バランスも優れていますし、水を汚す事も少ないので、生餌は特別な場合には限って使用して、普段はなるべく人工乾燥餌を使用するのが良いと思います。

それから、蓄積した燐酸塩を除去するには燐酸塩吸着剤を使うのが最も効果があるようです。還元濾過をセットしてあると硝酸塩の蓄積は抑えられますが、還元濾過では、燐酸塩の蓄積は抑制されません。そのため、燐酸塩は燐酸塩で、飼育水中から除去する方法を考える必要があります。

また、主に飼育水中のカルシウム補給の目的で行われるカルクワッサー(水酸化カルシウム水溶液)の添加も、燐酸塩の除去に効果があります。飼育水中の燐酸塩をカルシウムと結合させて、「燐酸カルシウム」を形成させ、沈殿させて水槽外に排除することが出来ます。

   
4. 薬品の使用
  餌を変えても、濾過を強化しても、生物兵器を導入しても、どうしても藍藻が減らなかったら、薬品の出番になります。通常の「珪藻」や「緑藻」用の薬品ではなく、その名も「レッドスライムリムーバー」という、藍藻専門の駆除用薬品が販売されています。
メーカーでは「無脊椎動物にも無害」と謳っていますので、リーフタンクキーパーなどでも使用されている方もいる様です。
ただし、やはり薬品は薬品ですから、安易な使用は厳禁です。「無害」とは言いながら、やはり一部のサンゴなどに悪影響があった事例もWEB上で報告されています。あくまでも「最後の手段」と考えて、飼育システムの改善によって藍藻の減少を図る方向で考えていただきたいと思います。
   
5. 照明時間の調節/殺菌灯・ヨウ素殺菌ペレットの使用
  これも「茶ゴケ」や「緑苔」同様に有効ですが、完全抑制は、やはり難しいでしょう。
   
6. 水流の調整(水流を強く)
  直接的に藍藻を減らすわけではありませんが、新たにパワーヘッドを追加したり、ポンプの吐出口の位置を調整したりして、藍藻が生えている場所に直接、強い水流を当てるようにすると、藍藻が減るという事例もあるようです。水流が当る場所には藍藻が生えない、ということではないと思いますが、強い水流が当たる事によって、藍藻が成長しにくい環境になるのかもしれません。
同様に、ヤドカリなどの底生性の生物を水槽に導入することによって、底砂などが常に撹拌されるような状況にしておくと、底砂の藍藻の発生は抑制されます。これも「藍藻が成長しにくくする」作戦の一つです。
   
注意
 
  • 一度発生してしまうと中々駆除が難しく、対応に苦労する「苔」です。
    飼育生体の数を調整したり、換水の頻度を上げたり、給餌の方法を変えるなどして、なるべく自然な形で、発生が抑制できるように頑張りましょう。
  • また、もし万が一、発生してしまった時には、「特効薬」というものが見当たりません。上記の「対策」を様々に組み合わせて、徐々に藍藻の発生が減るように工夫していただきたいと思います。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

「海底三百ミリメートル」トップに戻る
「放蕩息子の半可通信」トップに戻る

◇ ご意見・ご質問・ご批判等は掲示板、またはこちらまで ◇