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弊サイトが問題があると考える
商品、販売の事例

( 2005.08初回up / 追記:2005.11&2010.10 ) 

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これらの「事例」は弊サイトの管理者である放蕩息子がこれまでに見聞した中で、
個人的に「問題がある」と感じたケース(の一部)に過ぎず、
「生き物を玩具、雑貨、消耗品などと同様に扱い、その生命の尊厳を軽んじる行為」の、
全てではありません。
また同様に、具体的に例示したこれらの事例についてのみ、
特に告発する意図があるわけでもありまぜん。
あくまでも「事例」としての提示であることをご理解下さい。

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長期飼育な不可能な「飼育セット」とオカヤドカリ生体のセット販売
 


実際には長期飼育が難しい「飼育セット」と共に、オカヤドカリの生体が販売され、多くの子供たちの目の前で、「商品」としてのオカヤドカリが餓死、あるいは窒息死させられています。
具体的にはトミーの「ハーミーズクラブ」、マルカンの「ヤドカリランド」、およびその類似、模倣商品の設計と、特にその販売方法や、流通・店頭での管理状況に問題があります。

オカヤドカリを長期飼育するためには、オカヤドカリが脱皮する際に潜るだけの深さの砂が必要で、実際にはセットに付属している以上のサンゴ砂を買い足す必要がありますが、取り扱い説明書などにも十分な説明はありません。
また、長期飼育のためには(特に冬場の)温度管理、湿度管理が大切なのですが、飼育セットに付属している飼育ケースはこの温湿度管理が難しい構造になっており、温湿度管理のためのヒーターや温度計、湿度計なども、商品にはセットされていません。長期飼育を目指す消費者は、セットの購入後に、飼育ケースを買い替え、サンゴ砂、ヒーター、温度計を追加購入するなど、事前には十分な説明のない追加の出費を強要されることになります。

ところが、このように、オカヤドカリを長期飼育するためには全く不十分な商品内容であるにも関わらず、商品の販売時には、店頭その他で、「きちんと飼育をすれば、数年は生き続けます。」などと訴求されているのです。

その他にも餌入れ、水入れの容器形状など、商品の設計段階から複数の不備があり、長期飼育には不適な「飼育セット」と共にオカヤドカリを販売するのですから、発売元および販売店は、最初から、「この飼育セットでは長期飼育は出来ません。」と明示すべきです。これらの情報は商品価値の根幹に関わる重要事実ですから、それらを伝達せずに商品販売を続けることは、それが例え法律で禁止されていないとしても、消費者に対して不誠実な態度と言わざるを得ません。

またこれらのオカヤドカリ関連商品では、オカヤドカリ生体の販売方法が甚だ不適切で、多数の店頭在庫個体が死亡していたり、衰弱したりしていることも、大きな問題になっています。実際に、生体に餌も水も与えられないまま、店頭に放置されていたり、生きたオカヤドカリが自由に動くことも出来ないブリスターパック詰めにされて販売されているなどの報告が、各地から相次いでいます。

そのような環境におかれたオカヤドカリは、それでも直ちに死ぬことは少ないのですが、体の内部には既に深刻なダメージを受け、数週間の後(つまり「商品」が消費者の手元に届けられてから数週後)には、購入者がいかに適切な管理を行っても、ダメージから回復することなく死んでしまう場合がほとんどです。

生き物をこのような不適切な環境下で販売するというのは、「動物虐待」に他なりません。トミーやマルカンの商品などの販売が「動物愛護法」に抵触しないのは、甲殻類が「動物愛護法」の対象生物に含まれていないためだけなのであって、「動物愛護法」が改訂され、オカヤドカリが対象生物に含まれることになったらならば、トミーの商品も、マルカンの商品も、たちまち販売中止に追い込まれ、両社および販売店には刑罰が科せられることになるでしょう。両社の商品は、言わば「法律の抜け穴」を利用しただけのものであり、「動物愛護法」の立法の精神に反したものなのです。

あからさまな「動物虐待」が、幼い子供たちが集まる玩具店頭や量販店等で大々的に行なわれているというのは、倫理上だけではなく教育上にも、大きな問題があります。また、最初から長期飼育が不可能なダメージを受けている(でも外見からはそうとは分からない)生体を、「数年は飼育できる」と誤認させて売るのだとしたら、それは一種の詐欺まがい行為とも言えます。

しかし現実には、多くの消費者(特に子供たち)が、これらの事実を知らされることなく、自らは無自覚のまま、オカヤドカリの「虐待」に加担させられ、高価な「飼育セット」を購入させられています(両社の「飼育セット」と同等スペックの飼育器具やオカヤドカリ生体は、バラで買えば半額程度で買い揃えることが出来ます)。
その上、入手できるのは、既に致命的なダメージを受けている生体である場合が少なくないのですから、現在の状況は、子供たちの教育上の観点からも、動物愛護・生命倫理の観点からも、また消費者保護という意味でも、あらゆる点で看過出来ない状況と言えます。

さらに、トミー、マルカンという、玩具、ペット、それぞれの大手企業が市場を開拓した結果として、中小・零細の“後追い企業”が続々と“オカヤドカリ市場”に参入する状況を招いていることにも、大きな問題があります。中にはどこにでもいる普通のヤドカリを「何万匹に1匹の貴重な生体」などと称して異常な高値で販売する事例があったり、外国産生体の密輸が疑われる事例も見受けられます。
国産オカヤドカリは全て天然記念物に指定されており、その人工繁殖技術はいまだ開発されていません。その国産オヤドカリの捕獲には許可が必要なのですが、現在のような状況がこのまま拡大していけば、国産オカヤドカリの密漁の横行や乱獲により、オカヤドカリ資源の減少、絶滅までもが危惧される状況になるのは間違いないでしょう。
自らの事業展開の影響を考慮しない大手企業の無節操な利益追求が、我が国の貴重な自然環境・生態系に、回復不能なダメージを与えつつあるのです。

天然記念物であるオカヤドカリの捕獲・販売が許可されているのは、地域の伝統文化・伝統産業保護のために過ぎません(沖縄県にはオカヤドカリの仲間を食用にする伝統文化があり、そのための業者にオカヤドカリ捕獲の許可が与えられています。)。大手メーカーが“生きている玩具”として大々的に販売することなどは法律の想定外のことであり、今回のケースはこの点でもまた、「法律の抜け穴」を利用した“問題商法”と言えるでしょう。

このように、大手企業による「飼育セット」とオカヤドカリ生体のセット販売は、消費者保護、動物愛護、子供たちへの教育、自然環境保護という様々な観点のそれぞれで、大きな問題を抱えており、その意味で、「生物商品」の問題点が凝縮された「象徴」とも言うべき商品・商法となっています。
利益追求を至上命題とする企業からみれば、法的には何の問題もない正当な商行為に過ぎないのかもしれませんが、倫理上、直ちに改善が求められるべきであると考えます。

   
 

店頭で山積にされた「飼育セット」。
この店舗では悪評高い“パック詰め販売”は行われていませんでしたが、このような「飼育セット」では、オカヤドカリの長期飼育は出来ません。

 


追記: 2005年の9月にはまず大阪府で、続いて10月には東京都で、オカヤドカリの不適切な販売に対して、ある種の“行政指導”(法的にはあくまでも「指導」ではなく、「アドバイス」や「聞き取り調査」に相当するようですが)が行われました。
オカヤドカリの販売状況に関して、行政サイドでも問題視されるようになって来たことの表れです。詳しくは是非、こちらをご覧下さい(↓)。
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17319/1890699#1890699
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17319/1995523#1995523

これを契機に、社会全体が、オカヤドカリ(および他の商品生物も含む)の不当な取り扱いを排除する方向に動き出すことを切に望みます。
(2005.11.01)


 

小型ガラス瓶内での飼育を前提とした、アカヒレやアベニーパファーの販売
 
小型淡水魚である「アカヒレ」が、小さなガラス瓶に閉じ込められて、“癒し雑貨”として、玩具店や生花店で販売されています。
具体的には、ぶらっさむの「コッピー」や、ミズックスの「プチリウム」などの商品があります。

アカヒレ自体は大変丈夫な生体ですので、このように小さなガラス瓶の中に閉じ込められても、ある程度の期間、生存することが可能です。しかしこのようなセットで販売されているガラス瓶の環境がアカヒレにとって快適なものであるはずはなく、事実、このように小さなビン内での飼育では、アカヒレも十分な成長が出来ず、本来の寿命よりずっと短期間に、本来のサイズよりも小型なまま、死んでしまうケースが多いようです。

また、狭いガラス瓶内での複数飼育の場合には、縄張り争いが起こり、そのために拒食や栄養障害などを起こすケースもあります。これらの状況を改善するためにはより大きな水槽に買い換えるなどの必要があり、良心的な飼育者(と言うより、むしろ「常識的な飼育者」と言うべきですが)にとっては、追加の出費が避けられない商品です。

さらに、販売環境が劣悪なこともオカヤドカリと同様で、生体飼育の経験もノウハウもない販売店頭で、小さなビンに詰められたまま、死んでいたり、あるいは死に掛けているアカヒレがそのまま放置されている状況を、しばしば目にします。これもやはり、「法律の抜け穴」を利用した「動物虐待」に他ならないと言えるでしょう。
幼い子供たちが集まる玩具店頭などで、小さな命のが軽々しく扱われ、金儲けに利用されている状況がディスプレイされていることが、幼い子供たちの教育上好ましくないことも、オカヤドカリと同様です。

しかも、アカヒレ自体は淡水魚飼育の世界では極めてポピュラーな魚であり、鑑賞魚ショップでの販売価格も1匹30円程度のものです。それが、ちょっと小綺麗なガラス瓶に入れられ、玩具店や生花店の店頭に置かれただけで、千円以上もの価格が付くのです。「高付加価値販売」とは言いますが、アカヒレの価格を知る者にとっては、とても妥当な価格とは思えません。これも、購入者の知識不足に付け込んだ商品といえます。

アカヒレの場合には人工繁殖魚が流通していますので、それが直ちに自然生体の乱獲による環境破壊を招くものではありませんが、しかし、上記のような点を見る限り、消費者保護、動物愛護、教育上、等の観点から、やはり問題があると言えます。
法外なお金を払って死にかけの魚を買い、机の上で繰り広げられる縄張り争いや病気に心を痛めて、さらに追加の出費を強要されて、どこが“癒し”になるのでしょうか。

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また、アカヒレと全く同様に販売されている生体に、アベニーパファーという淡水フグがいます。ミズックスの「ふぐ太郎」などの商品があります。

アベニーパファーの場合も、問題点も「アカヒレ」の場合と全く同じで、消費者保護、動物愛護、教育上、様々な問題があります。
栄養不良のためか背骨が曲がってしまったアベニーパッファーが小さなガラス瓶の中に閉じ込められて、弱々しく泳いでいる姿を見たことがありますが、このように哀れな姿の魚を、法外な金額を払って自宅に連れ帰って鑑賞することで、誰が“癒し”を感じるのでしょうか。そこに“癒し”を感じるのだとしたら、その感性自体、取り返しようもなく狂っているとしか思えません。

また特にこの「商品」は熱帯魚であるだけに、冬場の飼育にヒーターが必要になるのですが(注:下記「追記」をご覧下さい。)、販売&購入時に、購入者にどこまでその情報(ヒーターの購入が必要であること)が伝えられているか、疑問が残ります。オカヤドカリの場合と同様、「このセットでは長期飼育は出来ません。」と明示し、購入者に対して注意喚起すべきです。

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某生花店の店頭にて。
100円ショップでも買えそうな容器に入ったアカヒレが2匹で1,050円。同じ魚が近所の観賞魚店なら2匹で60円。
ただし、法的には何の問題もありません…。

 


追記: 2010年10月に、このページをご覧いただいたアカヒレ飼育者の方から
>アカヒレは冬場ヒーター無しでもすごす事ができます
というメールをいただきました。

私がこのページで「冬場の飼育にヒーターが必要になる」と書いたのは、アベニーパファーに関して指摘したつもりでしたが、上記の
>この「商品」は熱帯魚であるだけに
と書いた部分で、「この商品」の指示内容を明示しなかったために、誤解が生じたものと思います。

上述の通り、飼育にヒーターが必要になるのはアベニーパファーの飼育においてであって、通常、極端な寒冷地などを除けば、我が国の大部分の地域では、冬場でもアカヒレの飼育にはヒーターは不要と思われます。(WEB情報などを検索しますと、10℃前後の水温でも生存可能だということです。)
従ってアカヒレの通年飼育にヒーターが必要だとは言えませんので、その点を特に追記しておきます。

ただし、WEB等で情報を検索しますと、アカヒレの飼育適温は20〜23℃程度ということですので、冬場での水温が20℃を下回る場合などには、むしろヒーターを使用した方が、アカヒレにとっては好適な飼育環境が維持できる可能性があります。従って弊サイトでは、アカヒレ飼育におけるヒーターの使用もまた、否定はしません。

また逆に、たとえアベニーパファーの飼育であっても、冬場の水槽水温が20℃を下回らないような温暖な環境で飼育するのであれば、ヒーターを使用する必要がない可能性もあります。大切なのは飼育適温を維持できるかどうかですので、ヒーターの要・不要は、あくまでも一般論としてお考え下さい。
ただし、特に冬場は一般に、日中の水槽内水温と夜間の水槽内水温の差が大きくなる傾向がありますので、たとえ温暖な飼育環境であっても、やはりヒーターを利用して、一日の間の水温変化を最小化したほうが、良好な飼育成果を得られる可能性は高いものと思います。

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なお今回、私にメールを下さった方は、ご近所で仲の良いペットショップ方に作っていただいたガラス瓶入りのセットのまま、既に2年半の飼育実績をお持ちとのことです。(その際の価格は200円だったそうですが…(^_^;;)

ガラス瓶の飼育環境でもある程度長期間の飼育ができるという事例ではありますが、それが本当にアカヒレにとって好適な飼育環境であるかどうかという問題や、私が写真に撮ったように、最初からビン詰めのままで長い流通を経て、生花店などの店先で販売されているアカヒレもまた、この方のアカヒレと同様に飼育可能な生体なのかどうかという問題は、この方の飼育実績とは別の問題であると、私は考えます。
(最初からビン詰めのパッケージ商品として流通されている場合には、密閉された状態のまま長期“在庫”となっている可能性も考えられ、店頭販売時点で既に生態に致死的なダメージが潜在している危険性を否定出来ません。)

またもちろん、この方が200円で購入されたものと大きく変わらないであろう内容のアカヒレ飼育セットを、その5倍もの価格で販売するという“商法”が、商道徳上妥当なものであるかどうかについては、やはり全くの別問題であり、疑問と言わざるを得ないでしょう。

ですので今後とも弊サイトでは、この「弊サイトが問題があると考える商品、販売の事例」に、「小型ガラス瓶内での飼育を前提とした、アカヒレやアベニーパファーの販売」を挙げ、ご覧いただく皆様への問題提起を続けてまいります。是非皆様のご意見をお寄せ下さい。
(2010.10.18)

 

“メンテナンスフリーインテリア”としてのスカーレットシュリンプの販売
 
ハワイ産の海産エビのスカーレットシュリンプ(ハワイアン・レッド・シュリンプ/オバエウラ)が、小型の密閉容器に閉じ込められて、「メンテナンスフリーの癒し系ペット」などのキャッチフレーズで販売されています。
具体的にはロジネットの「ホロホロ」や、ルナエンバシージャパンの「ビーチワールド」などがあります。

この問題点も「アカヒレ」「アベニーパッファー」などと同様です。確かに数週間から数ヶ月程度の間(場合によっては年単位でも?)、購入した商品セットの中で飼育することも可能かもしれません。しかし、その環境はスカーレットシュリンプにとって、決して快適なものとは言えません。スカーレットシュリンプが丈夫な生体だからこそ、死なずに生存し続けられるだけのことであって、「飼育している」というよりは、「殺さないようにしているだけ」と言うべきでしょう。

スカーレットシュリンプは本来であれば、岩の隙間などに隠れて人の目に着かない場所で暮らすはずの生体です。しかしそのような生態を再現したのでは、鑑賞目的の商品としては成立しません。そこで「ホロホロ」や「ビーチワールド」などの商品では、彼らが本来生息するような“隠れ場所”のある環境を作らず、飼育ケースの中には、ごく少量の底砂と「シーファン」と呼ばれる刺胞動物の死骸(骨格)だけが入れられています。つまり本来の棲息環境を無視して、無理やり、飼育者の目に晒されるような商品設計にしているのです。それはやはり「虐待」の疑いを免れ得ないものと言えるでしょう。

またこれらの飼育セットの説明では、「中の生態系は完全循環」「地球だけが持つユニークな働きを、…完全な形でつくりあげています」などと訴求されており、まるで完全にバランスが取れた生態系が飼育セットの内部で、簡単に構築されるように感じさせます。しかし実際にそのバランスを取るための温度管理や光の管理は非常に難しく、決して「メンテナンスフリー」などと言えるものではありません。そのため、多くの場合には、内部のスカーレットシュリンプは徐々にエネルギーを使い果たし、本来は成長のための脱皮をする度に小型化して(!)、本来の寿命よりもずっと早く、死亡してしまうことが多いようです。

つまり、「ホロホロ」にしても「ビーチワールド」にしても、中に閉じ込められた生体の立場から言えば、「いかに過酷な環境で生き延びることが出来るのか。」が試されている、実験装置のようなものなのです。この商品の購入者は、目の前の生き物に可能な限り過酷な環境を与えて、もがき苦しみながらも生き続ける姿を見て愉しむことになります。それはある意味、人間の残虐性に関する深い考察を促すものですが、その実態を知れば誰も自宅におきたいなどとは考えないでしょう。

ところが他の商品と同様、この商品の場合にも、そうした「マイナス面」は購入者には全く知らされません。それどころか、その「スカーレットシュリンプがぎりぎり生存可能な過酷な環境」が、自然の生態系そのもののような、間違った認識を与えられます。その意図的な誤認を促すためのツールとして用いられている「NASAの技術によって生まれた」等の訴求は、その内容を厳密に検証すれば、誇大広告・虚偽記載の疑いがあります。

   
 

バラエティショップの店頭販売での状況。
もし本当に「中の生態系は完全循環」であるなら、棚の奥の暗い場所に置かれたものは、光のエネルギーを得ることが出来ず、とっくにバランスが崩れているはずですが…。

 


 

長期飼育が困難な「海水魚入門セット」とカクレクマノミ生体のセット販売
 
現在(2005年8月)までには、大幅に事例が減少しましたが、通常、淡水魚に比べて「飼育が難しい」といわれている海水魚であるカクレクマノミの小型個体が、そのままでは長期飼育が難しい小型水槽や飼育器具とセットで、海水魚飼育未経験者を対象に販売されていました。
(なぜ「未経験者を対象に」と断言できるかと言うと、海水魚飼育経験者であれば誰も買わないような、お粗末な内容の「飼育セット」がほとんどであったからです。)

特に2003年末にデイズニー映画「ファインディング・ニモ」が公開された後の昨2004年春から夏に掛けては、そのような「飼育セット」が“ニモ飼育セット”などの名称で大量に販売され、結果、カクレクマノミや、その他、数多くの海水魚の生命が無駄に奪われました。

それらの“ニモ飼育セット”の中には、水量わずか5Lしかない超小型水槽に、2〜3cm程度のカクレクマノミの幼魚を入れ(場合によっては2匹も!)、換水が1回出来るか出来ない程度の少量の人工海水とセットにして販売されているケースもありました。しかし通常、水量10〜20L程度の超小型水槽での海水魚飼育は非常に難しく、ましてや、新しい水槽セットと生態を同時購入したのでは、まず99%、その生体を殺すことになります。
にも関わらず、そのような事実は一切告げられないまま、「必要な器具が揃っているのですぐ飼えます。」「繁殖も可能です。」などというセールストークが使われていました。

また、そのような“セット”の販売時には、本来であればとても飼育不可能な過密飼育の状態の水槽がディスプレーされ、未経験者を誤解させていました。その事例を下記のサイト(↓)でご覧下さい。
http://www.tetra-jp.com/magazine/top_magazine_vol14.html

上記サイトは観賞魚用品業界では最もメジャーなメーカーのサイトですが、「ファインディング・ニモ」のブームに便乗して、大規模なキャンペーンを行っていました。ここで紹介されている事例は「セット販売」ではありませんが、“ブーム”の時期に販売されていた“ニモ飼育セット”のほとんどが、この程度か、もしくは更に飼育能力が低い、お粗末な“飼育セット”でした。

このWEB上では、横幅わずか30cmの超小型水槽に3匹のカクレクマノミとナンヨウハギ、キイロハギが入った水槽が紹介されていますが、このような装置でこれらの生体を長期飼育することは、全く不可能です。説明文中にも「全長2〜3cmの個体なら2〜3尾ぐらいが適量です。」と小さく書かれていますが、それであるならば「セット例」の写真もやはり、「2〜3cmの小型魚が2〜3尾」の事例にすべきではないでしょうか。

事実は、上記の説明文が正しいとすれば、ここで紹介された水槽では、「セット例」の写真に登場する魚はどれも飼育することが出来ません。なぜならば、この中で最小サイズであるカクレクマノミですから、成魚は小さくても4〜5cmに成長する魚だからです。しかもペアを作り、縄張り争いをしますので、小型水槽に3匹のクマノミを入れておけば、その中の1匹はほぼ確実に、他の2匹にイジメ殺されます。
ナンヨウ、キイロもそれぞれ、10cm以上に成長する魚で、それぞれの尾の付け根には縄張り争いの際に武器となる鋭いトゲが生えています。このトゲは鋭く、気を付けなければ人間ですら、大きな怪我に繋がるほどのものです。
つまり、観賞魚業界大手のメーカーが「巷で話題の海水魚たちを手軽に楽しむ」として紹介している水槽は、その中で魚たちが縄張りを巡って血みどろで殺し合うところを見て愉しむための水槽だということになります。
(※ただし、実際に超小型水槽でカクレクマノミが飼育できるか出来ないかについては、弊サイト内の別コンテンツを参考に、各自でご判断ください。)

このような、メーカー、販売店が共謀した悪質な情報操作によって、多くの消費者(中でも海水魚飼育未経験者)が、「実際には海水魚を飼えない(少なくとも長期飼育はほとんど不可能な)海水魚飼育セット」を購入させられました。そして案の定、数週間程度で「セット」されていた生体を全て殺し、海水魚飼育を諦めたり、あるいは、より高価な器具を追加購入させられたりしたのです。その構図は、現在も続いている「オカヤドカリ飼育セット」の販売の状況とほとんど変わりません。

また特に“ブーム”の時(昨年春〜夏ごろ)には、販売されている生体の状態が悪いことは目を覆うばかりで、その点も現在の「オカヤドカリ飼育セット」の販売と共通している点です。中には、水温安定が不可欠な海水魚を販売するのに、吹きさらしの屋外のワゴンに水槽を並べて、中のクマノミのほとんどが死に掛けているような事例もありました。それまでは海水魚など販売したことのないバラエティショップが販売したために、最低限、守るべき条件すら、販売店自身が知らなかったのです。そのため、中にはわざわざ、「販売商品はあくまでも飼育セットであり、生体はサービスですので、死亡などの場合にも生体の保証・交換には応じられません。」などと注釈をつけて販売されているケースもあったのですが、つまりそれほど過酷な環境に生体を置き(=虐待)、劣悪な状態の生体を販売していたと言うことです。

(なお、これらの事例の多くでは、販売店の目的がそもそも、飼育器具販売による売上獲得にあったことは明らかです。クマノミ生体は「飼育セット」を販売するためのインセンティブ(購買意欲刺激のための手段・道具)に過ぎませんでした。ですから、「生体はサービスです。」と言うのは、ある面で極めて正直な“本音”でした。)

またカクレクマノミの場合には、人工繁殖技術は確立しているものの、鑑賞魚市場に流通しているカクレクマノミの大部分は自然採集魚であり、一気に大量のカクレクマノミが販売されたために、自然の海でも乱獲が起こり、報道などに取り上げられたことをご記憶の方も多いと思います。

このように、現在の「オカヤドカリ飼育セット」の問題が起きる前にも既に、「“ニモ”飼育セット/海水魚入門セット」というカタチで、全く同じ構図の動物虐待、生命軽視、環境破壊、の“詐欺まがい”商法が行われ、子供たちの教育に悪影響を与えて来ました。「“ニモ”飼育セット」の場合にはそれでもやはり、「オカヤドカリ飼育セット」に比べれば“商品”の取り扱いが難しく、また映画の公開を景気とした一時的な“ブーム”に過ぎませんでしたので、現在ではやや沈静化している部分があり、少なくともWEB上などでは、かつてのような酷い事例を見ることはなくなりましたが、現在でも、その影響は残っています。「“ニモ”飼育セット」以前には考えられなかった「海水魚入門セット」が販売継続されていますし、何より、「あんな小型水槽でもカクレクマノミやナンヨウハギなどを飼育できるんだ。」という“誤解”が、海水魚飼育未経験者や入門者に広がったままなのです。そのために、本来は海水魚飼育に適さない超小型水槽で、無謀な過密飼育を行う飼育者が増え、それによって無為に殺されていく海水魚が絶えることがありません。

“ニモ飼育セット”の場合には、たまたま、“ブーム”が去ったために、現在までにはほとんどの商品が姿を消しましたが、現在も販売が継続されている「オカヤドカリ飼育セット」のように、いつまた同様の“問題商法”が“ブーム”となるか分かりません。そうした“商法”の被害者となる消費者や生物や自然環境を少しでも減らすために、“ニモ飼育セット”の教訓を忘れてはいけません。

   
 

超小型水槽でのセット販売。
水量が少ない水槽での海水魚飼育は非常に難しく、ベテランの飼育者でも成功するとは限りません。
“ニモブーム”より以前には、このような小型水槽での海水魚飼育が一般に薦められる事はなかったのですが…。

 


 

薬物採取海水魚や脱色イソギンチャクの販売
 


他の事例のように「セット商品」や“パッケージ・グッズ”としての販売ではありませんが、生命倫理や消費者保護、自然環境保護の観点から、上記の商品と同様か、それ以上の問題があると考えられますので、合わせて問題提起します。

観賞用海水魚販売店に置いて、薬物やダイナマイトの使用、あるいは密漁などの違法な手段によって採取された生体が広く一般に流通し、その上、それらの違法採集の事実を告知される事もなく、当たり前のように販売されています。

それらの違法な採集は主に海外、特に東南アジアの海で行われ、我が国の海水魚ショップで、多くの場合には、“初心者向け”の安価な生体や、“バーゲン品”として販売されています。しかし、薬物などを使用して採取された個体は、外見上何の問題もないように見えても、体内には深刻なダメージを受けており、飼育者がいくら適切な飼育を行っても、数日〜数週間、もしくは数ヶ月程度で死亡してしまいます。海水魚飼育を始めると、本来は非常に丈夫な種類の生体であるにも関わらず、何度買ってきてもすぐ死んでしまう場合がありますが、そのような場合にはまず、この薬物採取・違法採取が疑われます。

これらの違法採取の問題点は大きく3つ、あります。

まず販売される生体の生命を軽視している点。販売店側が最初から、「どうせ消耗品」という感覚で販売しているのです。実際、安売り中心の某海水魚ショップで、店員自らが来店客に向かって、「安い魚はたいていすぐ死にますよ。」などと言って説明している現場に出会った事がありました。(本来は非常に丈夫な生体であるはずのカクレクマノミについての発言です。)

2つめは、そのように店員自らが「すぐ死ぬ」と認識している生体が、大抵は何の説明もなく、当たり前のように販売されている点です。「すぐ死にますよ。」と店員が説明したのも、国内採取魚と海外からの輸入魚の価格の違いを不思議に思った来店客が店員に質問したからで、その一方、店内には価格と産地以外の説明表示は一切ありませんでした。勇気ある顧客が店員に質問しない限り、「国内産」と「輸入魚」の“品質”の違いは分からないのです。
またそもそも、店員自らが「すぐ死ぬ」と分かっているような商品を販売する事自体、消費者軽視であり、商業倫理上、問題があると言うべきでしょう。

そして3つめは、グローバルな視点で見ると最大の問題と言えますが、そのような違法採集魚を販売、および購入するという事が、海外での違法採集の拡大を助長し、壊滅的な自然環境破壊を促進するという事です。
薬物やダイナマイトを使った採集は、広範囲に渡って生態系を破壊し、何年、何十年後にまで悪影響を残します。違法採集魚を販売&購入するという事は、地球全体に対する犯罪への“共犯者”となる事に他なりません。決して許されることではないのです。

観賞用海水魚業界では以前から、一部の良識ある関係者が、この違法採集を告発する声を上げて来ましたが、その実態は依然として闇の中にあります。そしてここでもまた、そうした悪質な業者の“食い物”にされるのは、未経験者であり、初心者の方たちです。飼育経験が乏しく、観賞用海水魚流通の事情にも疎い未経験者・初心者の方たちが、そうとは知らず最初から、「すぐ死ぬ」生体を買わされているのです。

消費者保護の観点から言っても、自然保護の観点から考えても、またもちろん、生命倫理の観点から、こうした自然魚の違法採取や販売を許してはいけません。
販売店(海水魚ショップ)に問いただしても、そもそも販売店自身が違法採取であるかどうかの知識を持たない場合がほとんどですから、販売者側の倫理観に期待するだけでは事態の改善はありません。まず我々、顧客となる人間の側が、生体と観賞魚流通に対する知識を蓄え、違法採取が疑われる個体を買わないことを徹底する(例えどんなに安くても)。そのことによって、観賞用海水魚業界から、そのような違法採集個体を取り扱う悪質な業者が、自然と締め出されるようにすることが必要です。

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また、観賞用海水魚業界では以前より、“違法採取”と平行して、特にイソギンチャクの販売において、生体に不必要な負担を強いる「脱色イソギンチャク」の販売が行われており、生き物の“消耗品扱い”の典型となっていました。(実際に「イソギンチャクは消耗品」と言って憚らない販売店がありました。)

健康なイソギンチャクは本来、体内に共生して光合成を行う褐虫藻という微生物が存在しているために、多くはやや褐色がかった色彩をしています。ところが一部の業者は「鑑賞上美しくて人気があるから」というだけの理由で、採取してきたイソギンチャクを数週間、光の届かない暗い場所に保管し、体内の共生褐虫藻を死滅させ、真っ白に脱色してから販売していたのです。

褐虫藻はイソギンチャクの体内で光合成を行い、イソギンチャクに栄養を補給していますので、その褐虫藻を失ったイソギンチャクは、見た目はいくら美しくても、そのほとんどがやがて調子を崩し、死んでしまいます(ただし、脱色したからといって、直ちに死んでしまうわけではありません。そこに“違法採取”と同様の問題があります。)。
ところが特にイソギンチャク飼育の未経験者や初心者はこれらの事実を十分には知らないために、見た目の美しさだけで不健康な、脱色されたイソギンチャクを購入してしまうのです。
それどころか、この脱色イソギンチャクは、「より人気がある」ということで、褐色で健康なイソギンチャクよりも高い価格で販売される事も珍しくありませんでした。

イソギンチャクの採取はベテランの採取業者にとっても非常に手間暇のかかる、難しい作業であるだけに、薬物採取が疑われるケースが多数あります。そのように自然に大きなダメージを与えて採取したイソギンチャクに、さらに脱色によるダメージを与え、それを“消耗品”として販売すると言うのは、自然環境保護を考えると、決して許してはならない行為だと言えるでしょう。
最近では海水魚飼育に関しても飼育者の知識レベルが徐々に向上して、「白いイソギンチャクは不健康。長持ちしない。」ということが知られてきましたので、あまりに酷い状況は減ってきたようにも見受けられますが、今後とも十分な知識を蓄え、このような悪質な採取・販売を締め出さなければなりません。

なお、観賞用海水魚業界におけるイソギンチャク販売については、イソギンチャクとの共生飼育で人気のあるクマノミの人工繁殖技術が確立してきた事によって、場合によってはより大きな自然破壊に繋がる、新たな問題に直面する可能性が指摘され始めました。生き物の“消耗品扱い”とは直接的には関連しませんが、弊サイトの日記(「恥更科日記」)の2005年7月29日(金)の記事に、この件についても問題提起してありますので、是非ご覧下さい。→「恥更科日記」(2005年7月29日(金)付けの、『「ニモ」の人工繁殖、ということ。』という記事を検索して下さい。)


 

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