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カクレクマノミ繁殖ノウハウ集 [4]

稚魚の採取

 

クマノミの卵が孵化したら、次は稚魚の採集です。
産まれたばかりの稚魚はすぐ別水槽に移して、
特別な環境で飼育しなければなりませんから、
孵化当日になって慌てても間に合いません。
卵を産んだら、すぐに、稚魚の採集と飼育の準備をしておきましょう。

 

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◇ ◆ ◇ 準備するもの ◇ ◆ ◇

1. エアレーションセット エアポンプとエアホースとエアストーン
水槽ポンプ停止時の酸素供給に使用します。
2. 稚魚の飼育水槽セット 繁殖ノウハウ[5]を参照
3. 稚魚を掬う容器 私は角型の500mlペットボトル(烏龍茶など)の底の方を4〜5cmの深さに切り取ったものを使います。網は使いません。(理由は後述)
4. 懐中電灯 稚魚を光で集めるのに使います。
5. たらいなど広くて浅い容器 稚魚を採取している間に、稚魚飼育ケースを保温するために使いました。
6. 温度合わせした新しい海水 稚魚を掬った分、減ってしまった親水槽の海水の補充に使います。
7. 懐中電灯 稚魚を光で集めるのに使います。
8. 大き目のスポイトやピペット 稚魚の「間引き」に使用します。
9. 稚魚の餌(ワムシ) 採取直後から、稚魚に餌を与えます。
この餌は「シオミズツボワムシ」という、汽水域に住む動物プランクトンです。
稚魚の孵化の1週間くらい前から準備して、採取後の稚魚にすぐ与えられるようにしておいて下さい。(別項目参照)
10. その他 新聞紙、タオルなど
海水がこぼれますから、水槽の周囲などに用意しておきます。

 

◇ ◆ ◇ 稚魚の採取方法 ◇ ◆ ◇

孵化の当日は、以下の手順にしたがって、
稚魚の採取〜飼育へと移行していきます。
稚魚採取の前に産卵から孵化までの日数を確認して、
いつが稚魚の孵化日になるか、予想して置いてください。

1.水槽ポンプの停止とエアレーションのセット
 
  • 卵の孵化が予想される晩には、水槽を真っ暗にする前にまず、水槽のポンプを停止します。
    孵化した稚魚がポンプからの水流に流されて、濾過装置に吸い込まれるのを防ぐためです。
    (逆に、ごく弱い水流なら、ポンプを止める必要はありません。)

  • この時、水槽内が酸欠になるといけませんので、エアポンプとエアストーンを用意し、水槽内にエアレーションを施します。
    またついでに水槽のフタや上部のライトなどを取り払っておくと、後で作業がしやすいでしょう。

 

2.水槽の消灯 → 部屋全体を真っ暗に
 
  • エアレーションを施した後、水槽の照明はもちろん、部屋全体の灯りを消す(または黒布で覆う)などして、水槽内を真っ暗にして、30分〜1時間ほど、静かに待ちます。

  • この時間は、日没後であれば、午後7〜8時くらいの早い時間でも構わないと思います。
    一度、水槽を消灯して近所の神社の夏祭りに行った後、8時すぎに帰宅したら、すっかり孵化していたこともありました。

 

3.孵化の確認と稚魚飼育ケースの準備
 
  • 30〜1時間後、水槽の照明は消したまま、部屋全体の照明を点灯して稚魚を確認して下さい。
    (または懐中電灯で水槽内を照らしてみます。)

  • そこで稚魚の孵化が確認されたら、稚魚を採取しますので、稚魚飼育ケースを水槽のすぐ隣に運んできます。
    この時、稚魚飼育ケースがすっぽり入るくらいの大きさの「たらい」などに水を張り、飼育ケースはその中に浮かべるようにしておくと、稚魚飼育ケースの保温が出来ます。
    「たらい」の中の水はもちろん、事前に親の水槽と同じ温度に合わせておきます。
    冬場や真夏に稚魚採取をする際などは、飼育ケースの中の水がすぐ、冷えたり、温まったり、してしまうので、このような保温対策が必要なのです。

  • また、この時稚魚が孵化していなかったら、おそらく孵化は翌日です。
    稚魚採取道具を片付けて、翌日の晩、再び挑戦してください。

 

4.稚魚の採取
 
  • 稚魚飼育ケースの準備が出来たら、水面近くに懐中電灯の光を当てて、その光で稚魚を集めます。
    そして稚魚が適当な数(5〜10くらい)光に集まってきたら、ポットボトルの底などで作った容器で、周りの水ごと、稚魚を掬い出します。

  • この時、あまり欲張って、いっぺんに沢山の稚魚を掬おうとしない方が良いでしょう。
    少しずつ丁寧にやって、稚魚にはなるべくショックを与えないよう、気を付けて下さい。
    また、この時には決して「網」を使ってはいけません。「網」は魚の体表を著しく傷つけますので、網で掬った稚魚は全部、死んでしまいます。

  • また私の経験で言うと、稚魚は思ったほど、光に集まって来てくれません。
    海老の幼生などは幼生同士がぶつかるくらい、密集して集まりますが、クマノミの稚魚の場合には、そこまで密集はしないようです。
    どちらかというと1匹ずつ、掬い取るようなつもりで良いのかもしれません。

注) 大量の稚魚を採取する方法
  稚魚を大量に採取しようとする場合には、ペットボトルなどでいちいち掬い取るのではなく、直径の太いホースを使って、サイホンの原理で、水ごと一気に吸い出す方法もあります。
私は「サイホン式」を試したことがありませんので、どちらが良いかは分かりません。
ただ、私の方法でも100匹近い稚魚を掬うことが出来、30匹の稚魚を育てられたわけですから、素人が繁殖にチャレンジする方法としては十分だと考えています。
 

5.飼育ケースへの移動
 
  • 稚魚が掬えたら、水ごとそーっと、稚魚飼育ケースの中に放します。稚魚飼育ケースの中には事前に親の水槽の水を少量入れておくと、その際のショック(水流)を和らげることが出来るでしょう。
    高い所から容器をひっくり返して、水がバチャバチャと弾き飛ぶようではいけません。掬う時も放す時も、稚魚には出来るだけショックを与えないようにするのがコツです。

  • 確認は出来ていませんが、例えばポンプからの吐水口などの強い水流に当っただけでもその水圧で稚魚が骨折してしまう、と言う人もいます。それくらいデリケートなものだと思って下さい。

  • この作業までは部屋の灯りも点けず、暗い中での作業となります。
    (ただし、若干の灯りはあっても差し支えありません。)

 

6.稚魚飼育水槽のセットと給餌
 
  • 好みの数だけ稚魚が掬えたら、部屋の灯りを点灯します。その後、稚魚飼育ケースを、保温水槽などの、稚魚飼育のための水槽システム(次項参照)に取りつけ、稚魚飼育がスタートします。

  • 稚魚飼育システム用の照明を点灯し、エアポンプを作動させ、あらかじめ用意しておいた栄養強化済みの「ワムシ」(別項目参照)を与えます。上手に掬えた元気な稚魚なら、やがて、パクパクと口を動かして、何かを食べるような仕草をするのが分かるでしょう。

  • この時のポイントも、稚魚になるべくショックを与えないことです。稚魚飼育用の照明も、いきなりフル点灯するのではなくて、最初は何かで覆いながら、飼育ケースの中が徐々に明るくなるようにすると良いでしょう。

  • 餌を与える時にも少しずつ、ポタポタとたらす感じが良いと思います。飼育ケースの中をグルグルかき混ぜたりしないようにして下さい。

  • またエアレーションも出来るだけ弱めで、稚魚が水流に踊るようなことがないように調整して下さい。ただしあまりに弱いエアレーションですと、何かの拍子に完全にストップしてしまうことがあります。エアレーションが止まると飼育ケース内はやがて酸欠になり、稚魚が死んでしまうので、弱すぎるのにも注意してください。
    3方コックなどを使うと便利です。

 

7.間引き
 
  • 次に、明るい光の中で、稚魚たちを良く観察して、明らかに生育が悪いもの、奇形のもの、状態が悪くて死にかけているものがいたら、それらの稚魚は育ちません。いずれ死んで、稚魚飼育ケースの中の水を汚す原因になりますので、早いうちにスポイトなどで吸い出して、間引きして下さい。
    まだ生きていると少し可哀想ですが、いずれ死ぬことが避けられないものたちです。諦めて下さい。

  • 飼育ケースの中層や上層を、ツンツンと泳いでいるものは良い状態です。ケースの底で横になったり、頭を下に逆立ちしていたり、完全にお腹を上に上げているものなどは、だいたい、死んでしまいます。中にはスポイトを近づけると急に泳ぎ出したりする者がいますが、それくらいの元気があれば、キープしておいても良いかもしれません。

  • 掬った稚魚のほとんどがケースの底でじっとしているようなら、稚魚の掬い方が悪かったものと思われます。

  1. 大きなショックを与えすぎていないか

  2. 温度変化が大きくなかったか

  3. 急激な水質変化を起こしていないか

    などをチェックして、次回の反省点としてください。

 

8.片付け
 
  • 稚魚飼育システムが順調に運転を始めたら、親の水槽の片付けです。

  • 稚魚を掬うために、かなりの量の海水を汲み出したと思いますので、水が減った分、新しい海水を補充します。海水はあらかじめ、温度合わせをしておきます。

  • エアレーションの道具を片付け、ポンプを再稼動させ、親の水槽は通常運転に戻します。

以上が、稚魚を採取する手順です。

 

◇ ◆ ◇ 稚魚採取の際の注意点 ◇ ◆ ◇

  • できるだけ手際良くやるためには、あらかじめ頭の中で採取の手順をシミュレーションしておいて (イメージトレーニングですね)必要な器具類などの準備をしておくと良いでしょう。

  • 採取に当っては、とにかく稚魚にショックを与えないこと。それが最も大切です。
    水質、水温、水流、光など、急激な変化は出来るだけ、避けてください。

  • 丁寧にやっていると意外に時間が掛かりますが、手早くすることばかり考えずに、時間が掛かることを前提として、保温や酸欠の問題にどう対処するか、あらかじめ対策を準備しておくことをお勧めします。
    そのために、保温用の「たらい」などの準備をお勧めします。

  • 採取する稚魚の数は、飼育ケースの大きさで調整して下さい。とても全てを採取できるものではありませんので、大部分の稚魚はそのまま、死んでしまうことになると思います。
    水質維持のことを考えると、少なめに採取するのが良いです。
    たくさん掬っても、たくさん殺すだけです。

    この稚魚の数については私がワムシなどを購入した横浜の海水魚ショップ
    「マリンルートワン」では、社長が「10Lくらいの飼育ケースを用意できれば、最終的には、50匹くらいは育てられるのではないか。」と言っていました。

    私が30匹を育てた時には最初、4Lの飼育ケースに100匹くらいの稚魚が入っており、明らかに過密でしたので、2〜3日目くらいまでの間に、少しでも調子の悪そうな稚魚はどんどん、間引きをしました。その結果、最後まで育ったのは30匹でしたので、「50匹/10L」も妥当な数だと思います。
    ただし、私の4Lのケースであれば、最初は50〜60匹で初めた方がより良かったかもしれません。それでも、十分、30匹のレベルになったのではないかと思います。

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