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カクレクマノミ繁殖ノウハウ集 [6]

稚魚の餌について

 

カクレクマノミの稚魚は、孵化直後の体長が2〜3mm程度。
通常の人工乾燥餌などは使用できないので、
1〜2ヶ月の間、「ワムシ」と「ブラインシュリンプ」を与えて育てます。

ここではその餌の種類と、その育て方、与え方を説明します。

 

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◇ ◆ ◇ 餌の種類 ◇ ◆ ◇

1.ワムシ(シオミズツボワムシ)
 
  • 孵化直後(=孵化当日)から2〜3週間の間、使用します。
  • 「種」となるワムシをショップから購入して、孵化の1週間前くらいから、準備すると良いでしょう。
  • 大型のペットボトル(1.5Lくらい)に、ワムシを入れ、強めにエアレーションを掛けたところに、毎日、ワムシの餌となる「淡水クロレラ(クロレラ)」を与えて育てます。
  • ただしそのままでは海水魚に必要な栄養分が不足しますので、クマノミに与える前日から「マリンクロレラ」によって2次培養を行い、栄養強化してから与えます。
  • 孵化後3〜4日目くらいからはブラインシュリンプと併用して、徐々に移行させます。
2.ブラインシュリンプ(アルテミア・サリーナ)
 
  • 孵化後3〜4日目くらいから、2ヶ月目くらいまで、与えます。
  • 「ブラインシュリンプ・エッグ」を購入して、自宅で孵化させ、その幼生(ノープリウス)を
     与えます。(グッピーの稚魚の餌としても一般的な餌です。)
  • ワムシ同様、クマノミに与える前日から、2次培養(栄養強化)を行う必要があります。
  • 孵化後2〜3週間から、1ヶ月程度経過したら人工飼料も与えて、徐々に人工飼料に移行させて行きます。
   
※.2次培養(栄養強化)について
 
  • 稚魚の初期飼料となるワムシとブラインシュリンプのノープリウスは、そのままでは海水魚に必要な不飽和脂肪酸(DHA、EPAなど)が不足しています。海水魚はそれらの栄養を餌から摂取しなければなりませんので、稚魚の餌であるワムシとブラインシュリンプについても、クマノミに与える前に、これらの栄養素を豊富に含む「マリンクロレラ(海産クロレラ)」を摂餌させ、餌自体を栄養強化してから、クマノミに与えることが推奨されています。(2次培養)
    このことによって、稚魚の死亡率は大幅に減少するそうです。
  • 栄養強化の方法としては、ワムシの場合、クマノミに与える数時間から、通常の餌である「クロレラ(淡水クロレラ)」に代えて、「マリンクロレラ」を与ます。
    ブラインシュリンプの場合には、ノープリウスを採取した直後から「マリンクロレラ」を与えて、「マリンクロレラ」で育てるようにします。
  • 2次培養(栄養強化)の時間は最低一晩(7〜8時間)から、長くても24時間程度です。
    ブラインシュリンプの場合には24時間の間、2次培養すると、途中、幼生が脱皮して成長してしまうことがありますので、クマノミ稚魚のサイズに合わせて、2次培養の時間調整を行って下さい。

 

◇ ◆ ◇ ワムシの飼育方法 ◇ ◆ ◇

クマノミ稚魚の最初期の餌となるワムシは動物性プランクトンの“活餌”です。
ワムシが死んでしまうと稚魚は食べませんので、
クマノミの稚魚を飼育するには、稚魚の飼育と同時に、
稚魚の餌となるワムシも飼育する必要があります。

以下にそのワムシの私流の飼育方法を説明します。

1. ショップで1Lのワムシを購入します。
 

2. そのワムシを500mlずつに等分し、それぞれ、1.5Lのペットボトルに入れます。
 

3. それぞれのペットボトルに「海水:真水=7:3程度に調整した汽水」を500ml注ぎ、1Lに戻します。(合計で2Lになります。)
ただし、汽水の濃度は、ショップの濃度を聞いて、最初はそれに合わせて下さい。
 

4. それぞれのペットボトルにエアレーションを強めにかけ、淡水クロレラを10滴、滴下します。
  ペットボトルの中の水が、不透明な、濃い緑色になります。
 

5. 大型のプラケース等に水を入れた中にペットボトルを入れ、27℃程度を維持します。
 

6. ワムシの維持のために必要な、クロレラ(淡水クロレラ)の量を計測します。
  最初にクロレラを投入した後、12時間ごとや24時間ごとに、ペットボトルの中の水の色を観察して、「不透明で緑色」から「透明で黄色」になったら、ワムシがクロレラを食べ尽くした状態です。
この変化に12時間かかるのなら、ペットボトルの中には、1日に20滴のクロレラが必要な数のワムシがいることになります。
「透明で黄色」まで24時間かかるなら、10滴/1日。逆に8時間で「透明で黄色」になったら、必要量は30滴/1日、ワムシの数によって、適宜、調整して下さい。
なお、1日に30滴必要な場合も、1度に30滴を滴下するのではなく、2〜3回に分けた方が良いです。
 

7. 毎日、必要量のクロレラを滴下して、ワムシをキープします。ワムシの数は徐々に増えるので、最初は10滴/1日だったものが、1週間もすると、20滴/1日、30滴/1日に増えて行きます。
ワムシが余りに増えすぎてしまうと、酸欠などで一気に死滅してしまうことがあるので、その際には時々、間引いて下さい。
 

8. ペットボトルの中の水が徐々に古くなるので、3〜4日から1週間程度の期間で、ペットボトルの中の水を全て、新しいものに入れ換えます。(換水の間隔は、ワムシの数=ペットボトルの水の汚れ具合で調整します。)
  「ワムシネット」の中にペットボトルの水を全部注いで、ワムシだけを漉し取ります。
(緑の水は全部、捨ててしまいます。)
「ワムシネット」に漉し取られたワムシを見ると、モゾモゾと動いているのが分かるはずです。
あらかじめ温度と濃度を合わせた汽水、1Lの中に、その「ワムシネット」を入れて、揺するようにして洗うと、ワムシが全て水の中に戻るので、その水をペットボトルに戻します。
ペットボトルの内側にはクロレラのカスがこびりついて緑色になっているので、ワムシをペットボトルに戻す前に、ペットボトル用のブラシなどで、綺麗に洗っておいて下さい。
   
※. ワムシ飼育の注意点
 
  • 餌やりと水換えの作業を繰り返せば、永遠にワムシをキープすることも不可能ではないと思われますが、最初にワムシを購入してから一ヶ月程度経つと、ワムシ以外の微生物が繁殖するなどにより、ワムシの品質が低下してくるので、いったん全てリセットし、再び新しいワムシを購入して下さい。
     (我が家でも線虫のような微生物が発生したのを、顕微鏡で確認しました。)
  • 他の微生物などの混入を防ぐため、ワムシ飼育に使用する汽水には全て新しい人工海水を使用し、他の水槽の水などが混入しないよう、気をつけます。
    ワムシ飼育に使用する器具も、使用前後にはよく水洗いして、異物の混入を防いで下さい。
  • ワムシボトルの汽水の濃度については、購入するショップに確認して下さい。
    濃度によって繁殖の速度などが変化してくるそうです。
    私はワムシ飼育ボトルの濃度はショップの濃度に合わせ、2次培養の際に少し濃度を上げて、クマノミ水槽の塩分濃度(=海水)に近づけておきました。
    また、ワムシボトルの水温についても同様にしました。

 

◇ ◆ ◇ ワムシの2次培養の方法と、クマノミへの与え方 ◇ ◆ ◇

前述したように、ワムシにはクマノミに必要な不飽和脂肪酸が足りませんので、
クマノミに与えようと思う前日から、ワムの2次培養(栄養強化)を行い、
栄養たっぷりのワムシを与えます。

1. 1.5Lのワムシボトル(水量は1L程度)から、500ml弱程度の「ワムシ入りの水」を取りだし、
別のペットボトル(500mlの小型ペットボトルで良い)に入れ、エアレーションをかけます。
  この時、500mlを取り出した残りの1.5Lのワムシボトルには、温度&濃度を調整した新しい汽水を補充し、引き続きワムシのキープを続けて下さい。
 

2. 新しい500mlのペットボトルにマリンクロレラ(淡水クロレラではないことに注意)を10滴程度滴下し、そのまま、最低7〜8時間から24時間の間、2次培養(栄養強化)を行って下さい。
この間、マリンクロレラが食べ尽くされて、ボトルの中のワムシ水がすっかり透明になってしまうようなら、途中適宜、マリンクロレラを補充します。
 

3. 2次培養が終了したら、「ワムシネット」でワムシのみを漉し取り、マリンクロレラ入りの水は全て捨ててしまいます。
 

4. 「ワムシネット」で漉し取ったワムシを稚魚ケースの飼育水ですすいで、ワムシを稚魚に与えます。
   
※. クマノミに与える際の注意点
 
  • ワムシは一度に大量に与えるのではなく、一日に何度にも分けて、少量ずつ与えるのが理想です。
  • サラリーマンである私の場合には、クマノミの世話をするチャンスが限られていたので、ワムシを与えた後、クマノミ稚魚飼育ケースの中に、少量(5〜10滴程度)のマリンクロレラを滴下しておきました。クマノミにマリンクロレラを食べさせるためではなく、稚魚飼育ケースの中のワムシに食べさせるためです。
    それによって、常に栄養満点のワムシをクマノミが食べられるように、と考えたのですが、どのような効果があったのかは疑問です。
    またその分、稚魚飼育ケースの水質が悪化するので、大量の水換えも必要になるますので、稚魚の飼育ケースにマリンクロレラを入れることに是非については、今後、稚魚飼育にチャレンジする人が、各人で判断して下さい。

 

◇ ◆ ◇ ブラインシュリンプの孵化の方法 ◇ ◆ ◇

ブラインシュリンプの孵化のさせ方は有名ですし、
「ブラインシュリンプエッグ」を購入すれば
 取扱説明書に詳しく記載されていますので、
ここでは省略します。

 

◇ ◆ ◇ ブラインシュリンプの2次培養と、クマノミへの与え方 ◇ ◆ ◇

基本的には「ワムシ」と同様です。

ただし、2次培養するボトルの中の水は、
ブラインを孵化させた水をそのまま使うのではなくて、
2次培養のための海水を別に用意します。

この海水は、飼育ケースの換水の際に稚魚保温水槽から
汲み出したものを使って構いません。
海水が2次3次利用できて、無駄になりません。

また2次培養の時間が長すぎると、ブラインが成長してしまい、
稚魚が食べられなくなってしまいます。
特に稚魚が小さな段階では、
2次培養の時間は短めにしてください。

 

◇ ◆ ◇ 餌の切り替えについて ◇ ◆ ◇

稚魚の成長に合わせて、
「ワムシ」→「ブライン」→「人工餌」とステプアップします。
途中、餌の切り替え期間は2種類の餌を併用して下さい。
孵化直後から、完全に人工飼料のみに移行するまでの間に使用した餌は、
私の場合、以下の通りです。

詳しくは「ちびクマ繁殖記録」をご覧下さい。

第1段階: 孵化直後〜3日目まで
  • マリンクロレラで2次培養し、栄養強化したワムシのみ
  • ワムシは孵化直後から給餌しました。
 

第2段階: 4日目〜20日目まで
  • ワムシとブラインシュリンプのノープリウスを併用(いずれもマリンクロレラで栄養強化済み)
  • ワムシ中心から、徐々に、ブライン中心に移行させて行きました。
 

第3段階: 21日目〜35日過ぎくらいまで
  • 栄養強化したブラインシュリンプが中心。
  • 11日目ごろから時々、冷凍コペポーダや人工飼料をすり潰したものなどを与えていましたが、あまり食べませんでした。
 

第4段階: 35日ごろ〜66日目まで
  • 栄養強化したブラインと人工飼料を併用。
  • 時々、冷凍コペポータを給餌したが、冷凍コペポータを給餌した後には稚魚の体調がおちるような感じがあったので、あまり使用しませんでした。
 

第5段階: 67日目〜
  • 稚魚を飼育ケースから出したのに合わせて、完全に人工飼料に移行しました。
  • 移行当初は人工餌を若干すり潰して、粒を小さくして与えていましたが゜、ほどなく、全く通常の餌になりました。

 

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