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続・放流について

〜 「“ニモ”放流」への私的評価と提言 〜
(2005.09.25)

 

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2005年の9月にTVで報道された、岡山理科大学専門学校による
養殖カクレクマノミの自然放流(石垣島・名蔵湾)について検討します。

少し冷静に考えれば、手放しで“良いことだ”とは言えません。
これを契機に、自然環境の保全や回復と
趣味としてのマリンアクアリウムの共存について
共に考えて行きましょう。

 

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「“ニモ”の放流」への疑問
  2005年の9月に、岡山理科大学専門学校の皆さんが、自分たちが繁殖させたカクレクマノミの幼魚、300匹を、親魚の採集場所である石垣島の海に放流したというニュースを知りました。

[参考サイト]

        QAB琉球朝日放送Web Site - 繁殖クマノミ海へ放流
http://www.qab.co.jp/01nw/05-09-05/index7.html
        Yahoo!ニュース - 共同通信 - ニモ、両親の故郷へ 沖縄の海に300匹放流
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050915-00000025-kyodo-soci

しかしこの「放流事業」は、何の目的を持って、どのような計画の下に、実施されたのでしょうか。その意義が、私にはどうも良く理解できないのです。

実はこの「放流事業」については、ある方から教えていただいて、その後、私もマスコミ各社の報道内容を、WEBを通じて見たり、岡山理大専門学校のホームページ( http://www.risen.ac.jp/animal/aquarium/topics2005/ )を見て確認などしたりしたのですが、そこでは放流の事実そのものは告知されているものの、放流の目的や今後の追跡調査予定など、その必要性や詳細な事業計画等については、ほとんど(全く?)知ることが出来ません。
2005.9.15付けで共同通信社が、マスコミ各社に向けて同校の放流事業を配信したことから、今回の放流事業も広く一般に認知されるようになり、現在(2005.9.25)ではWEB上などでも、この件に関して、「放流したクマノミが元気に育って、少しでも自然が回復してくれると良いと思う。」などという一般の方の意見が散見されるようになっていますが、例え関係省庁の許可を受けた上で、親魚を採取した場所と同じ場所にその子供たちを放流したとはいえ、やはり飼育魚の自然放流に関しては、慎重の上にも慎重に行わなければならないことは言うまでもありません。その点で、今回の岡山理大専門学校のクマノミ放流も、本当に十分に慎重に計画された妥当なものであり、自然環境の保全・回復に貢献するものであるのかどうか、その是非がしっかりと検証される必要があるのではないでしょうか。

参考として、水棲生物の自然放流に関して発表された、2つのガイドラインをご紹介します。

放流・移植ガイドライン
  今回のクマノミ放流の是非を検討するに際して、まず最初に確認しておかなくてはならないのは、今年(2005年)の3月に発表されたばかりの、日本魚類学界による「生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン」と言う事になるでしょう。全文を掲載するのは冗長になりますので、ここでは「本文を簡潔にまとめたもの」として発表されている「要約」をそのまま、掲載します。
      本文は日本魚類学界ホームページ内の「自然保護委員会」内、「ガイドライン」の中に公開されています。
こちらも是非ご覧下さい。→ 
こちら http://www.fish-isj.jp/iin/nature/guideline/2005.html

[生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン・要約]

    基本的な考え:希少種・自然環境・生物多様性の保全をめざした魚類の放流は,その目的が達せられるように,放流の是非,放流場所の選定,放流個体の選定,放流の手順,放流後の活動について,専門家等の意見を取り入れながら,十分な検討のもとに実施するべきである.
      1. 放流の是非:放流によって保全を行うのは容易でないことを理解し,放流が現状で最も効果的な方法かどうかを検討する必要がある.生息状況の調査,生息条件の整備,生息環境の保全管理,啓発などの継続的な活動を続けることが,概して安易な放流よりはるかに有効であることを認識するべきである.
      2. 放流場所の選定:放流場所については,その種の生息の有無や生息環境としての適・不適に関する調査,放流による他種への影響の予測などを行った上で選定するべきである.
      3. 放流個体の選定:基本的に放流個体は,放流場所の集団に由来するか,少なくとも同じ水系の集団に由来し,もとの集団がもつさまざまな遺伝的・生態的特性を最大限に含むものとするべきである.また飼育期間や繁殖個体数,病歴などから,野外での存続が可能かどうかを検討する必要がある.特にそれらが不明な市販個体を放流に用いるべきではない.
      4. 放流の手順:放流方法(時期や個体数,回数等)については十分に検討し,その記録を公式に残すべきである.
      5. 放流後の活動:放流後の継続的なモニタリング,結果の評価や公表,密漁の防止等を行うことが非常に重要である.

ただし、上記の「放流ガイドライン」はそもそも、淡水魚の河川への放流を念頭に置いて策定されたものであるために、結果として養殖魚の放流に関してあまりにも寛容過ぎる感が否めません。というのは、我が国の河川(内水面)の多くでは既に、養殖魚の放流が、内水面漁協の主要な事業として広く行われており、地域の内水面漁業者の生活を支えているという事実があるためです。
(そのため、このガイドラインの「本文」中にもはっきりと、「本ガイドラインは,主として野生集団の保全を目的とする放流のためのものである.それ以外の目的を含む水産業やレジャー,ペット投棄などに伴う放流行為を対象としない.」と明記されています。)

そこでここでは、さらなる参考のために、魚の放流とは異なりますが、日本サンゴ礁学会が造礁サンゴの移植放流が増えている(?)ことに対応して発表した(2004.12)「造礁サンゴの移植ガイドライン」の項目を(これも項目名だけを抜粋して)、併せてご紹介することにします。

[造礁サンゴの移植に関してのガイドライン・留意すべき点(抜粋)]

      1. サンゴ礁生態系の遺伝的攪乱に最大限注意すること
      2. サンゴの密漁や違法な流通を助長させないこと
      3. 移植用サンゴの採捕にあたっては、親群体(ドナー)への影響を極力抑えること
      4. 移植に用いるサンゴは特別採捕許可などの関連法令規則に基づいて採捕されたものであること
      5. 移植技術の向上を図り、採捕前後の調査と移植後の管理を行うこと
      6. 科学的な裏づけのない単なる集客目的のイベントにしないこと

さらに、この「造礁サンゴの移植ガイドライン」の「基本的見解」の項目には、

「…日本サンゴ礁学会としては、手放しで移植事業を奨励することは出来ない。また、修復技術の開発は、人間活動による沿岸域の乱開発やサンゴ礁の破壊を容認するものであってはならない。サンゴ群集の回復には好ましい生育環境条件の「保全」が最も大切であり、私たちは「修復」によってサンゴ群集の再生を助けるだけである。

と書かれており、無視できない重要な要素の一つとなっています。

      この「ガイドライン」や同時に発表された「特別採捕許可への要望」や「特別採捕許可への提案」には、自然環境の保全・回復のために活動しようとする際に忘れてはならない重要な指摘が沢山含まれていると、個人的には考えています。
詳しくはこれも是非、「
造礁サンゴの移植と特別採捕許可に関する要望・ガイドライン 」をご覧下さい。

(既に述べたように、)この「ガイドライン」は魚の放流に関するものではありませんが、3.や4.等の一部の項目を除けばそのまま、魚の自然放流にも当てはめるべきだ、と考えられるでしょう。

放流・移植ガイドラインとの整合性
  さてそれでは、これらの「ガイドライン」に照らした時、今回の岡山理大専門学校の放流は、どの程度まで整合性があり、自然環境の保全・回復に役立つと、肯定的に評価できる事業なのでしょうか。

まず第一に、岡山理大専門学校のホームページでも紹介されているように、放流個体はいずれも、石垣島で採集された親魚から採れた卵を孵化させたものです。ですから「放流ガイドライン」の3.の項目や「移植ガイドライン」の1.の項目については、最低限のレベルはクリアしていると考えられます。
(もちろん、厳密に考えれば更なる問題点を指摘する事も不可能ではありませんが、今回の評価は決して岡山理大専門学校の放流を否定する事を目的としているわけではありません。ですから敢えて、“あらさがし”のようなことはしません。)

また、放流に際しては事前調査の上で、カクレクマノミが好んで共生するハタゴイソギンチャクが生育している場所を選定した様子が伺えますので、「放流ガイドライン」の2.の項目もクリアしていると考えて良いでしょう。

しかし一方、今回の放流に関して、現在までWEBを通じて得られた情報から判断する限りでは、事前にクマノミ放流の必要性がどれほど検討されたのか、それが本当に石垣島のカクレクマノミ個体数の回復にとって最良の方法であると、代替手段と十分な比較検討の上で決定されたのか、全くうかがい知ることが出来ません。それどころか、WEB上のニュース映像などで確認できる学生の方たちの発言などからは、むしろ、かなり安易に放流が決定されたような印象さえ受け取れます。

そのため、「放流ガイドライン」の1.の項目との整合性には大きな疑問を感じさせますし、また、放流前後の調査活動の実績、今後の調査計画についても、明確にはされていません。従って、「放流ガイドライン」の4.5.および「移植ガイドライン」の5.に抵触する可能性も高いと思われますし、ということは、「移植ガイドライン」の2.6.そして「基本的見解」との整合性がどこまで取れるのかも、分からないのではないでしょうか。(ただし、あくまでも2005.09.25.時点での、WEB上の情報から判断した限りでの、私の見解に過ぎませんが…。)
「自然放流」の問題点
  この文章を読まれた方の中には、「外国の魚を放流するわけではないし、クマノミが減っているというのだから、養殖して増やすというのは良いことじゃないか。それをなぜ、関係のないサンゴ移植の話まで持ち出して、問題があるように言うのか?」と、お考えになる方がいるかもしれません。しかし、問題はそんなに簡単なことではないのです。というのは、自然の海に人工の養殖魚を放流することには、以下のように、いくつもの問題点があり、多くの場合、より深刻で回復困難な自然環境破壊に結びつく可能性が大きいからです。

    1. 定着しない
      まず第一の問題点として、自然放流した魚が定着しないということが挙げられます。今まで水槽の中しか知らない魚が自然の海に放流されるのですから、当然、全ての魚がその海に定着し、生き残れるというものではありません。むしろ自然放流した魚の中の何割が生き残ることが出来るのか、それを考えなくてはいけないでしょう。
個人的には、今回の放流された300匹のクマノミのうち、本当に定着して石垣島で子孫を残すことが出来るほどに成長するのは、1割にも満たないのではないかと考えています。今回の放流に当たっては、幼魚25匹が1パックとされて放流されたそうですから、放流された場所のイソギンチャクに先住者がいなかったとしても、生き残るのは最大で2/25=8%程度に過ぎないからです。放流の画像を見ると既に先住者のいるイソギンに追加で放流などもしている様子ですので、生存の確率はさらに減少すると考えられます。そうして、実際に生き残ることが出来るクマノミが何匹になるかと考えて行くと…。
10匹?5匹?(^_^;;

私は現在、石垣島の海で年間、何匹のカクレクマノミが観賞用として採集されているのかは知りませんが、その数が5匹だの10匹だのと言う事はあり得ません。
であれば、普通に考えれば、この300匹のカクレクマノミを自然放流せず、そのまま観賞魚店に販売した方が、よほど沢山の数の自然のクマノミを救う事になるはずです。
そう考えれば私でなくても誰もが、「果たしてこの放流に何の意味があるのかな?」と、疑問を感じずにはいられないのではないでしょうか。
       
    2. 自然魚を駆逐する
      さらに、1.では放流魚の定着率の低さを問題にしましたが、生態系のバランスということを考えると、実は定着率が高い方がむしろ問題は大きくなってしまいます。というのは、人工繁殖魚が定着して、イソギンチャクを占拠してしまうために、本来ならばそのイソギンチャクに定着し、自然繁殖したかもしれない天然のクマノミを駆逐してしまうからです。天然の魚が減ったからと言って安易に養殖魚を放流すると、結果的自然魚の数が却って減ることになるというのは、今、全国の河川で実際に起きていることです。このアンビバレントが、放流の最も難しい部分になります。
       
    3. 遺伝的多様性が損なわれる
      そしてこれも2.と関連しますが、同じ親から生まれた沢山の稚魚が、同じ海域に大量に増えることになれば、当然、その地域の遺伝的多様性が損なわれることになります。いわゆる“近親交配”による悪影響(近交弱勢)も、現れやすくなる可能性があるでしょう。
       
    4. 海域の生態系のバランスを人為的に崩すことになる
      それにそもそも、その放流海域には、以前は多量のカクレクマノミが住んでいたのでしょうか。それとも元々から、カクレクマノミが少ない海域だったのでしょうか。そしてその海域で“自然な”クマノミの量(数)というのは、どれほどのものなのでしょうか。
それらの点がクリアでないまま、一度に大量の養殖魚放流が行われれば、それは環境保全や回復とは程遠い、新たな環境破壊に他なりません。クマノミの数が増えた、減ったというレベルの問題ではなくなってしまうことでしょう。
       
    5. 未知の病原体を蔓延させる可能性がある
      さらにこれもまた、既に全国の河川への鮎の稚魚放流等の悪影響の実例として表れていることですが、ある一箇所で養殖した稚魚を全国へ放流した行為が、全国に病気を蔓延させることになってしまうことがあります。鮎の「冷水病」という病気は、琵琶湖で養殖された稚魚から、瞬く間に全国に広がったと考えられています。
今回放流されたクマノミの稚魚は全て、石垣島で採取された親魚から生まれたものだそうですから、鮎の稚魚の場合とは条件が異なりますが、水槽飼育の間に、本来その地域にはいなかった病原体に冒されている可能性が、全くないではありません。病気の中には、ある条件の下でしか症状が現れない病気もありますから(鮎の冷水病も同様)、放流された稚魚がそういった病原体に冒されていないかどうか、完全にチェックするのは不可能です。そしてそのような保菌稚魚が大量に放流された場合、海域の生物に対する影響は膨大で、取り返しがつかないものとなります。

またさらに、これらの問題点に付け加えるならば、魚が放流される自然の海は、我々のような部外者にとっては、たまに訪れて遊んで帰るだけの、“レジャーの場”に過ぎないのかも知れませんが(名蔵湾に面しては、石垣島有数の大規模リゾートも存在していますね。)、地元に住む漁業者の方にしてみれば、そこに依って収入を得ている“生活の場”に他なりません。そこへ外部の人間がやって来て、地元の方々が望んでもいないような魚を大量に放流するようなことになれば、それは漁業者の方たちの生活を破壊することにもなるでしょう。
人工飼育魚の自然放流は、そのようなことまで含めて考えなければいけない大きな問題なのであり、「なんとなく自然に良さそう。」という、“気分”だけで是非を判断出来るような、簡単なことではないのです。

さらに、今回の放流を肯定する前提となる「クマノミが減っている」という“事実”。これは誰が確認しているのでしょうか。少なくとも(WEB上の情報から判断する限り)、岡山理大専門学校自身で確認しているということはなさそうです。今回の放流地点でクマノミの生息数の継続調査などを実施しているという発表はありませんでしたし、また石垣島でこれまでに、そのような調査が実施された/されているという話も、私は聞いた事がありません。

弊サイトでも度々話題にして来たように、2004年末に日本でも公開されたディズニー映画「ファインディング・ニモ」のヒットによって、世界中の海でカクレクマノミが乱獲され、我が国でも乱売されていたことは、まず間違いのない“事実”だと考えても良いと、私も思っています。実際にそれまでには考えもしなかったほど大量のカクレクマノミが、観賞魚店やホームセンターなどで販売されていました。
しかしだからとって、それは石垣島の海で、ましてや今回カクレクマノミが放流された名蔵湾で、カクレクマノミの数が減少している。ということにはならないはずです。
「江戸の仇を長崎で討つ」などという言葉もありますが(苦笑)、「クマノミの乱獲/乱売」と「石垣島(名蔵湾)でのクマノミの減少?」とを混同したのでは、単なる感情的な判断に過ぎませんし、それは世辞にも科学的な態度とは言えません。

その上、例え「クマノミが減っている」というのが事実だとしても、ではだからと言って、(既に述べたように、)養殖したクマノミを自然放流すればクマノミの数は増えるのでしょうか。クマノミの自然放流には石垣島の生態系のバランスを回復する効果があるのでしょうか。それよりもむしろ、自然の海のバランスを崩してしまうことになる危険性はないのでしょうか。

「“ニモ”の放流」に対する私的評価
  これまでに私が得た情報から判断する限りにおいては、残念ながら私には、今回の岡山理大専門学校の放流事業が、私の疑問に十分に答えてくれるものだとは思えません。私の疑問に答えるためには、1年や2年程度の短期的な調査データを見るだけでは足りず、何年にも渡った継続的な調査の結果を見て判断する必要があると思いますが、これまで公表されている情報からだけでは、今回の放流の前後に、そのような長期的な計画や、そうした計画を実現するための体制が整えられている様子が伺えないからです。

だとすると、もしかしたら今回の放流は、「クマノミが減っているらしい」という、根拠の乏しい“風評”(それは“事実”とは言えません。)に基づいて、これまた効果も明確でなく、場合によっては効果以上のデメリットまでもが想定される事業を行ったということに、なってしまうのかもしれません。
(もちろん十分な情報が揃っていない現時点で最終的な判断を行う事は出来ないのですが、少なくともそのような疑いを十分に晴らし得るほどの情報は、2005.09.25の現時点ではまだ、公開されていません。)

それではまるで我が国の官公庁の行う公共事業のようなものですが(爆)、そんな“思いつき”のようなことで、養殖クマノミの自然放流というような、場合によっては自然環境や地元の人々の生活に大きな影響を与える可能性のある事業が行われたのだとしたら、それに対してまた、我々一般市民は、安易に賛同の声を上げても良いものでしょうか。むしろ今後は同様の事業が拡大されて実行される事等がないよう、、監視を強めなければならないことなのではないでしょうか。
(嗚呼、しかしそうした安易な賛同もまた、今、我が国で、盛んに行われていることではあるのですけれども…!爆死)

今、自然環境保全に対する関心は、かつてないほど高まっていると思います。それは一種の“ブーム”と言っても良いほどでしょう。しかし本当の意味で自然環境を保全・回復したいと考えるのであれば、安易に“ブーム”に乗ってしまうのは考えものです。本当に効果が見込める環境保全・回復の活動と、自分たちが環境保全に役立つことをしているような気分になるだけの“環境保全ごっこ”とを、我々一般市民もまた、しっかりと区別する必要があります。

ましてや岡山理大専門学校というのは、単なる個人ではありませんし、また純然たる営利企業でもありません。公益性と公共性が求められる学校法人であり、教育と研究とを通じて、その成果を社会に還元し、社会を啓蒙して行くことを期待されている存在です。
その学校法人が、もし万が一にも、我々のような単なる素人と同レベル(もしくは素人以下のレベル?)の“環境保全ごっこ”で満足してしまうようなことがあれば、それはいかにも情けない話でもありますし、また社会に対して悪影響を及ぼすことでもあると私は考えます。環境保全に関する情報リテラシーの低い人々が、実際には何の意味もないどころか、もしかしたらむしろ環境悪い影響を与えかねない“環境保全ごっこ”を、本当に効果のある環境保全活動と取り違えることにも繋がりかねないからです。

今回の放流を企画した岡山理大専門学校の皆さんには、これらの点を踏まえて、今回の放流の目的と手順とを精査すると同時に、自分たちの行為が石垣島の自然に対してどんな影響を及ぼしており、また及ぼして行くのかを、明確に示していただきたいと思います。自分たちが行ったことが、本当に環境保全に役立っており、単なる“ごっこ”とは異なる事を、あるいは、もっと別の“科学的な裏づけのない単なる集客目的のイベント”に類するものでなかったのだということを、きちんと証明して行くこと。それによってしか今後は、社会からの正しい評価は得られない事を知るべきでしょう。
岡山理大専門学校への提言
  そして最後に、もし今回の放流が単なる“思いつき”ではなく、また“環境保全ごっこ”でもないと言うのであれば(もちろん、そうあって欲しいと私も望んでいますが)、私からひとつ、提言があります。
ただ一回、300匹ばかりのクマノミ稚魚を自然放流したことに満足しないで、この際、石垣島に「岡山理大専門学校石垣島臨海実験所」を開設して下さい。場所は今回の放流フィールドである名蔵湾に面した場所が良いでしょう。そして定期的にフィールドの調査を行って、名蔵湾におけるクマノミの生息状況についてのデータを集め、研究を重ねるのです。
もちろん、アクアリウム学科の学生の皆さんは、一定期間その「臨界実験所」に合宿してフィールド調査を手伝いながら、自然の海における生物の活動の有様を学びます。水槽飼育している魚たちが自然の海ではどのように生活しているのか、それを自分の目で見、身体で感じることは、今後、学生の皆さんが水族館やアクアリウム業界で活躍しようとする際に、必ず役に立つでしょう。

弊サイトの別ページでも触れていますが、岡山理科大学専門学校は現在、月産1万匹という大量のカクレクマノミ養殖の事業化を計画しており、その計画に対しても別の側面から、自然環境に対する壊滅的な悪影響が懸念されます。(詳しくはこちら → 
学校法人がそのような事業の実現を目指しているのであれば、この際、きちんとしたフィールド調査に基づいて、自らの事業の正当性を主張・立証していく必要があるのではないかと、私は考えます。
まとめ:日本ならではのアクアリウム文化とは?/“エコ・アクアリスト”の実現へ向けて
  日本は海に囲まれた国です。海水魚飼育者のほとんどは、自動車を数時間走らせれば、実際に海水魚が自然の海の中を泳いでいる姿を目にすることが出来ますし、また飛行機で数時間飛ぶだけで、世界でも有数の素晴らしいサンゴ礁に囲まれた沖縄に行くことも出来ます。言葉の心配もなく、パスポートも必要なく、水槽で泳いでいる魚たちが自然の海ではどんな暮しをしているのか、自分の目で確かめることが出来るのです。

このような恵まれた環境の中で海水魚を飼育することが出来る国は、世界中を探しても多くはないでしょう。そしてこのような環境で海水魚を飼育しているということを幸福と考えるのであれば、我々日本の海水魚飼育者は、海水魚の水槽を自然の海から独立した、閉ざされた小世界と考えるのではなく、常に自分の身の回りにある、自然の海へと繋がる“窓”として考えるべきだと思います。
(※注;ただし、それは飼育魚を簡単に自然放流して良いという意味ではありませんよ。笑)

世界中の海から見たこともないような魚やサンゴを集めてきて、それをどれだけ長く飼育することが出来るかを競うような“アクアリスト文化”は、既に過去のものだと、私は考えます。これからのアクアリウムは、単なる好奇心や征服欲を満たしたり、あるいはそこに“癒し”を求めるものですらなく、海水魚の採集や飼育を通じて、身の回りの自然の生き物の不思議さや精緻を知り、またその自然に囲まれて、自然に活かされて、自らの生活が成り立っていることへの“気づき”を促すものであって欲しい。

我々が単に美しいインテリアとしての“観賞魚”の泳ぐ水槽を“観賞”するのではなく、我々の自宅にある水槽を通じて自然の海の中のことを考え、また自然の海の中で発見したことを自宅の水槽の中に再現し、確認し、そこからまた新たな自然の不思議を見出す。趣味として海水魚飼育に取り組む一般人の多くが、そのような発想を持つのが“当たり前”のこととなれば、それは我が国だからこそ広く一般に成り立ち得る海水魚の飼育スタイルであり、とかく欧米の後追いと言われがちな我が国の海水魚飼育(ホビーレベル)が、欧米先進国と対等に比肩し得る独自のスタイルを確立したということになるのではないでしょうか。

そしてもし岡山理大専門学校が「石垣島臨海実験所」を開設して、観賞魚飼育者のエキスパート養成カリキュラムの中に積極的にそのような発想のフィールドワークを取り入れて行くならば、岡山理大専門学校は、そうした、我が国独自の海水魚飼育文化の確立に大きく貢献することになるでしょう。教育・研究機関としての学校法人の役割とは、そういうものであって欲しいと、私は考えます。

ホビーアクアリストというのはこれまでは、環境保全に関して“悪役”でしかありませんでした。しかしそれは逆に、貴重な自然環境が損なわれていくことに、いち早く気付くことが出来る存在でもあります。また、自然環境に負荷を与えている存在であるからこそ、自然環境の保全・回復に対しても積極的に貢献し得る知識とスキルをも、持っているのです。その知識とスキルを活かして、今までは“悪役”であったアクアリストが、これからは、自然環境の保全・回復のための行動の先頭に立たなければなりません(“エコ・アクアリスト”)。そのためには、自分の家にある水槽を単なる“動く絵”や“生きているインテリア”のように捉えるのではなく、日々刻々変化している自然の海への“窓”と考える発想が欠かせないと思います。
そしてそのような発想をアクアリウム業界に浸透させていくために、日本で唯一のアクアリウム専門学校である岡山理大専門学校に活動して欲しい。
今まで全く何の関係もない、第三者の勝手な願いではありますが、私は今それを、強く望んでいます。
   
追記1:岡山理大専門学校への問い合わせと回答
  この文章を書きながら、私はやはり一度、今回の放流の目的や計画の内容について、岡山理大専門学校に直接、確認する必要があるし、それが礼儀だろうと感じました。
そこで、この文章の公開に先立って、岡山理大専門学校のクマノミ放流ご担当者宛に問い合わせのメールを出したところ、ほどなくして、岡山理大専門学校のご担当の方から、返信を戴くことが出来ました。

ここにその全文を掲載する事は避けますが、その問い合わせメールの中では私は、主に、
1. 今回のクマノミ放流の目的
2. 放流地域・放流場所の選定方法
3. (前項目と関連して)事前調査の実施内容の概要
4. 今回の放流クマノミに対する今後の追跡調査計画の概要
5. 今後の放流活動の予定・実施計画の概要

の、5点に関心があり、今回のクマノミ放流の目的や今後の展開計画などについて、可能ならば直接回答いただけるか、さもなくば、ホームページ上などでの情報公開の充実を行うよう依頼しています。そして、その依頼に対して岡山理大専門学校のご担当者の方からは、

1. 自然環境への放流は十分な環境への配慮が重要であると認識していること。
2. 「生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン」を参考にはしているものの、これからも様々な議論があると思われること。
3. 私からの問い合わせの内容については、アクアリウム学科として、今後公表していく予定であること。

という趣旨の回答をいただきました。

今回受け取った返信の中では、直接的に私の疑問を解消する具体的な回答をいだくことは出来ませんでしたので、私としてもこの返信のみをもってして、今回の放流事業そのものまでを「是」とすることは出来ません。
ただし、岡山理大専門学校とは何の関係もなく、また問い合わせの目的も明確ではない一個人(=私)からの質問を無視することもなく、極めて紳士的に回答いただけたと言うことに対して、まず感謝したいと思います。また少なくとも、少しでも自社に批判的な問い合わせ等は全て黙殺するような、一部の営利企業とは明らかに異なる誠実な態度であると評価しています。

ただし、より大切なことは今後、どのような情報が公開され、それによって今回のクマノミ放流の是非がきちんと、第三者の立場から評価することが出来るようになるかどうか。ということになるでしょう。私は今後の岡山理大専門学校の情報公開によって、今回の放流に関して私が感じだ疑義が晴らされ、私もまた心おきなく、今回の放流を支持できる様になることを、強く望みます。

また、今後、岡山理大専門学校アクアリウム学科が公開する情報の内容によっては、今回の私の評価に関しても、変更・修正が必要になることと思われます。その際には出来るだけ迅速に、変更・修正の対応を取りたいと考えていますので、このページをご覧の皆様も、岡山理大専門学校アクアリウム学科の情報公開内容と、このサイトでの評価の変化に、引き続きご注目いただきたくよう、心よりお願いします。

追記2:御礼
  今回の岡山理大専門のクマノミ放流に関しては、メールを通じて何人かの方と意見交換させていただき、いくつかの重要な指摘や示唆を戴きました。メールを戴いた方に差し障りがあるといけませんので、ここでは敢えてお名前を挙げませんが、心より感謝しております。ありがとうございました。
(とまあ、だからと言って、私から感謝されても、皆様には何の役にも立ちゃしませんけどねぇ〜(^_^;;爆)
追記3:お知らせ
  なお、本文中にも少し触れていますが、弊サイト内には別ページに、大量の人工繁殖カクレクマノミが観賞魚市場に流通する事によって、新たな自然環境破壊を引き起こす可能性について論じたページがあります。
こちらも重要な問題ですので、このページとあわせて是非、ご覧下さい。
こちら → 海底三百ミリメートル・知識編[11]観賞用海水魚大量養殖の影響について
   
追記4:ダイバー vs アクアリスト (2005.10.14追記)
  何しろ、共同通信を通じて日本中に“ニモ”放流のニュースが配信されているものですから、私もこの問題に関して、広く世の中一般の方がどのように考えるのかを知ることも必要だろうと考えて、あれこれ、このニュースを取り上げた個人の方のブロクなどを見て歩きました。

しかしそうしたブログなどを見ていますと、どうやらこの岡山理専のクマノミ放流は、海水魚飼育者の間でよりもむしろ、ダイバーの間での方が、話題として取り上げられている様子が伺えます。これは単に愛好者人口の問題なのでしょうか。それとも両者の意識の違いなのでしょうか。

私はダイビング(スクーバダイビング)も、海水魚飼育もしますが、特にダイバーの方から見ると、海水魚飼育者は、自然破壊者の極悪人集団のように思われている部分があろうかと思います(苦笑)。この背景としては主に、スクーバダイビングの講習の中で、海洋生物の採集が厳しく禁じられていることがあるのだと思っているのですが、そうした教育を受けたダイバー(Cカード保持者)から見ると、海水魚飼育者や、私のような磯採集を趣味とする者は特に(^_^;;、自然破壊者の象徴のように見えるのでしょうねぇ(苦笑)。いささか口惜しいですが、それも仕方がない部分があるでしょう。

しかし(敢えて自分を棚に上げて言いますが(^_^;;)、こと海洋環境の保全や回復に関しては、「ダイバー」だの「海水魚飼育者」だの「磯採集家」だのという、小さなセクトに分かれて、互いの脚を引っ張り合うようなことは避けたいものです。いずれも大きな自然の恵みを受けて、その“懐”で遊ばせてもらっているのですから、その自然の保全や回復には、共に力を合わせて、取り組むことが大切でしょう。敢えて小異を捨てて大同につくことを目指すべきではないでしょうか。

ただ、その場合にもまず必要なことは、そのように、他の人々から厳しい視線で見られている本人、海水魚飼育者が、それらの厳しい視線があることを良く理解して、自分自身の姿勢を正すことだと思います。その意味で、今回の“ニモ”放流のニュースに対して、海水魚飼育者の反応が薄いと言うのは、些か残念な事ではあります。
   
追記5:個人によるクマノミ放流 (2005.11.05追記)
  2005.11.03 放送のフジテレビ『FNNスピーク』によると、石垣島において、人工繁殖生体の個人による自然放流が行われたとの事です。(昨年以来、合計3回目)
私はその番組を直接視聴していなかったため、現在、報道内容の確認を急いでいますが、学校法人による放流でさえ、その科学的な裏づけの更なる充実が求められる状況において、個人による放流が、学術的にも妥当であり、容認できる内容であったとは考えにくいでしょう。
今後、このような人工繁殖生体の自然放流が拡大すれば、石垣島の生態系は回復困難なダメージを受けることになります。クマノミの人工繁殖ノウハウを公開しているサイトの管理者・作成者として、私はこのような放流の拡大に賛成することは出来ません。
そこで私は、このような安易な放流の拡大に反対するために、とりあえず、トップページにアピール文を掲載することにしました。今後、報道内容の確認が取れ次第、反対アピールの内容も充実させていく予定ですので、引き続きご注目をお願いします。

その後のフジテレビWEBサイトの情報更新などにより、今回の個人による放流の詳細や、放送内容などが明らかになりましたので、「放流反対」のアピールページを作成すると共に、今回の放流や番組内容などに関する私の意見をまとめ、クマノミ飼育者に対する私の提言を行ったページを作成しました。こちらも是非ご覧下さい。(2005.11.14)

    放流反対緊急アピール
    クマノミ繁殖を行う人々への提言
   
追記6:別の学校関係者によるクマノミ放流 (2006.03.29追記)
  その後の継続的な情報収集の中で、昨年(2005年)夏にもうひとつ、別の学校関係者によって、沖縄の海への人工繁殖クマノミの放流が行われていたことを知りました。放流を行ったのは愛媛県立長浜高等学校自然科学部・「ながこう水族館」の皆さんです。

私はこのことをNHKの「地球だい好き 環境新時代」の番組ホームページで知りましたが、上記の「ながこう水族館」のサイトや、愛媛県立長浜高等学校の公式ホームページなどを見ても、実際の放流がどのように行われたのか、詳細な状況を確認することが出来ませんでした。そこで先日、2006.03.04付けで「ながこう水族館」サイトの問い合わせ先メールアドレスにメールを出して問い合わせをしたのですが、その後、この件に関して、「ながこう水族館」のご担当者の方からは何の返信もいただくことが出来ていません。

私は「ながこう水族館」の活動自体は、地域に密着した水族館の活動として、非常に素晴らしいものであると高く評価しておりますので、これを機会に是非、次代を担う若者である長浜高校の生徒さんたちと、人工繁殖生体の自然放流問題に関しても積極的な意見交換をしたいと願っていたのですが、今に至るまで何の返信もいただけないことを、たいへん残念に感じています。
(出来るだけ丁寧なメールを出したつもりではいたのですが、ま、狂信的な環境保護運動家か、もしくはただのクレーマーと受け取られましたかねぇ…苦笑)

なおもちろん(あまり期待は出来ないかもしれないとも思いますが(^_^;;)、今後、もし何らか返信いただけた場合には、再度、こちらのページでご報告いたします。気長にお待ち下さい(笑)。

(以下、2006.04.15追記)

2006.04.15付けで、長浜高校自然科学部の顧問の先生から返信のメールをいただきました!私からの質問に対して、非常に丁寧に回答して下さっています。
引き続き詳しい情報提供をしていただけるとの事ですので、情報がまとまった時点で再び、こちらにアップしますが、とりあえず返信いただけたことをご報告します。

長浜高校自然科学部の顧問の先生、私からの突然の問い合わせに対して、丁寧な返信をありがとうございます。(念のため実名を伏せさせていただきます。)

また、上記の「追記6」において、
>(返信は)あまり期待は出来ないかもしれない
などと書きましたことを、心よりお詫びいたします。たいへん申し訳ありませんでした。

なお、私自身の不適切な対応も記録に残すために、当面の間、「追記6」の掲載は継続します。ご理解をお願いいたします。
   
追記7:長浜高校自然科学部によるクマノミ放流・続報 (2007.01.22追記)
  昨年(2006年)の後半はプライベートで色々と忙しかったために(^_^;;、クマノミの放流関係の情報収集も全く行うことが出来なかったのですが、年が明けて久々に情報収集したところ、上記「追記7」で言及した愛媛県立長浜高等学校自然科学部「ながこう水族館」の皆さんが行っているクマノミ放流に関して、非常に重要な情報がWEB上に公開されていることに気づきました。

 → 長高水族館「カクレクマノミ放流プロジェクトについて

上記の報告書は、当初の私が危惧していた、放流による遺伝的撹乱に対する対策などについて詳細に説明した資料であると同時に、このページでご紹介している日本魚類学会の「魚類の放流ガイドライン」などで求められている、放流に関する情報公開の要求にも応えるものだと思われます。プロジェクトを支える体制や、自然放流の手順・方法などが丁寧に説明されているばかりではなく、「6 放流に関して、考えられる問題点とそれへの対応」というパートでは、クマノミ放流の他のケースの問題点や、地域の天然クマノミ資源(?)の将来展望にまで言及するなど、充実した内容となっていますので、このページをご覧になった方には是非、精読していただきたいと思います。

また今後、他の団体や個人などが人工繁殖生体の自然放流を行う場合には、少なくとも今回の報告書で説明されている程度の準備と観察体制の整備、継続的な調査やその過程と結果の公表をお願いします。
ながこう水族館」の皆さんの活動が今回、このように詳細に公表されたことが、今後の同様の活動の実質的なスタンダードとなり、安易な放流が抑制されることを期待して止みません。

このような実績を示してくださった「ながこう水族館」の皆さんに感謝し、今後のますますのご活躍をお祈りいたします。
   
追記8:国際サンゴ礁年2008』 (2007.06.19追記)
  クマノミに限った問題ではありませんが、国際サンゴ礁イニシアティブにより、2008年が「国際サンゴ礁年」に指定されたことを受けて、弊サイトでも、「『国際サンゴ礁年2008』に向けての提言」を掲載しました。アクアリストとしての“良心”に訴える内容です。併せてご覧下さい。
 → 『国際サンゴ礁年2008』に向けての提言
   

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