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白点三千個[1]
白点病・極私的概論

(2005.12.31)

 

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白点病の正体と、「克服」のためのポイントについて、概略を説明します。
私的な見解も含みます。

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白点病とは
  白点病は、海水環境中に棲息する「クリプトカリオン・イリタンス(Cryptocaryon irritans)」という、小さな繊毛虫(=原生動物に分類される、まあ、ゾウリムシの仲間みたいなものですな。笑)が魚体の表皮に寄生して起きる病気(寄生虫症)で、寄生された部分が、魚体上に白い点となって表れるため、「白点病」と呼ばれています。
寄生虫による病気であることを明確にするために、「白点虫症」と呼ばれることもありますが、個人的には淡水魚の罹る「白点病=淡水性白点虫症」と区別するためにも、「海水性白点虫症」と呼ぶのが最も適切なのではないかと考えています。
(ただし面倒臭いので(^_^;;、このページでは簡単に「白点病」と記述しますが。爆)

よく誤解されるのですが、淡水魚が罹る「白点病」の病原体は、同じ繊毛虫とは言いながら「イクチオフィリス・ムルチフィリス(Ichthyophthirius multifiliis)」という、全く別の原生動物で、生活サイクルも、繁殖の条件も、大きく異なっています。そのため、淡水魚の「白点病(淡水性白点虫症)」の治療法は、海水魚の「白点病(海水性白点虫症)」にはほとんど効果がないばかりか、多くの場合、病魚の体力を奪い、却って症状を悪化させます。
淡水魚の飼育経験をお持ちの方の場合は、この点を理解しないで、海水魚が白点病に罹患した場合にも淡水魚と同様の“治療”を施し、却って病魚の寿命を縮めてしまう例が非常に多く報告されていますし、海水魚飼育のWEBサイトなどでも、この点の理解が不足して、両者を混同している記述が見られます。違う病気に同じ名前を付けていることがそもそも、間違いの始まりだと思うのですが、ここで今更そんなことを私が言っても仕方がありません
(^_^;;。このページを読んだ方は、今後、特に十分に注意しましょう。

なお、魚体の表面に「白点」が現れる病気は、何も白点病だけとは限りません。私もリムフォシスティス(Lymphocystis)の初期症状を白点病と見間違えたことがありますし、魚体上の「白点」は、粘液胞子虫という寄生生物の卵(シスト)や、アミルウージニウム(Amyloodinium ocellatum いわゆる「ウージニウム症」の病原体である鞭毛虫)の栄養体(いわゆる“成虫”)にも類似しているそうです。また、最近では、韓国や日本の養殖ヒラメにおいて、分類が確定していない別種の繊毛虫も発見されているということであり、個人的には、従来、我々のような素人の海水魚飼育者が「白点病」として対処してきた病気のうちのかなりの割合は、実は「白点病」ではなく、別の病気だったのではないかと思っています。
(個人的には少なくとも2〜3割は別の病気ではないかと思っていますが、定量的な根拠はありません(^_^;;。)

さらに、そもそも病原体であるクリプトカリオン・イリタンス自体、4つの系統に分かれるらしく、それぞれの系統ごとに成長・繁殖の状況や、病原性(病気を引き起こす力の強さ)が異なる可能性があります。

また言うまでもありませんが、感染(寄生)される魚種や個体の状態によっても、白点病に対する耐性が大きく異なってきますので、これらの要素が複雑に組み合わさった結果、白点病は海水魚飼育において最もポピュラーな病気であるにも関わらず、その症状や進行の状況が極めて多様で(あるいは多様に感じられ)、診断の確定が難しく、その結果、現在に至るまでも、治療のための統一的なプロトコル(標準治療計画)が確立されているとは言い切れない状況にあります。
最もポピュラーでありながら、決定的な治療方法がないという、まあ極めて扱いにくい病気ですね(^_^;;。

「白点病で魚が死ぬ」理由
  さて、その白点病ですが、白点病は寄生虫症とは言え、寄生部分は魚の体表部分(と鰓)に限られており、また白点虫が何らかの毒素を吐き出すというわけでもありませんので、白点病が発症した(=体表に白点が現れた)からと言って、それだけで直ちに魚が死ぬことはありません。
しかし、それにも関わらず、非常に多くの方が白点病で魚を殺しています。(と言う私も、トリートメント中に白点病を発症したハタタテハゼを、結局救うことが出来ずに殺してしまいました…ToT)

それはなぜでしょうか。

白点病で魚が死ぬのは、主に、
       
    1. 鰓に白点虫が寄生して鰓の粘膜の異常や肥厚が起こり、魚の呼吸を妨げた(窒息)。
    2. 大量の白点虫の寄生によって体表粘膜の肥厚や剥離が起こり、浸透圧調整が上手くいかなくなった。
    3. 粘膜組織が傷つけられることによって他の細菌やウィルスなどに対する抵抗力が弱まり、他の感染症を引き起こした。
    4. 白点虫の寄生による痒み等で、魚が強いストレスを感じ、拒食などにおちいった。

などの理由が考えられます。つまり、白点病を契機として、拒食や感染症、その他の合併症を起こすことが直接の原因なんですね。
ですからよほど大量の白点虫に寄生される状態にまで症状が進行しない限り、白点虫症単独であれば、やがて自然治癒してしまうことも少なくありません。「白点病かな?」と思ったら、慌てず、騒がす、しかしすばやく、かつ時間を掛けて、(←矛盾する要素ばかりですが(^_^;;)適切に、対処しましょう。

白点病「克服」のポイント
 

また、白点病を克服する上で極めて重要なことは、

「白点虫が魚体上の白点として肉眼で確認出来るのは、白点虫の長い生活史(1週間〜数週間に及ぶ)の途中のほんの短い数時間だけのことであって、その他の大部分の期間は肉眼には見えず、また魚体内に寄生すらしていなくて、むしろ水槽底面の底砂やライブロック、濾材内部などで、密かに増殖しているのだ。」

と言うことを、きちんと理解することです。

つまり、いくら魚体から白点を取り去ったとしても、それは目に見えるほんの一部がいなくなっただけのことで、白点病の原因となる白点虫自体は、まだまだ水槽の中にウジャウジャいる。ということですね。

そう考えると、いくら“白点病”に罹った魚本体だけを“治療”しても、水槽の中に残っている白点虫(実際にはその卵−シスト−)を取り除かない限り、再び白点は現れ、症状はさらに悪化することになります。この点を理解しない限り、白点病の克服はありません。

ところが不思議なことに、多くの飼育書やWEBサイトでは、「魚体から白点を消すこと=白点病の治療」と捉えられているように感じますし、BBSなどへの書き込みを見ても、「魚体から白点が消えた」ということで安心してしまう人が多いように、私には感じられます。そのような誤解を放置したのでは、飼育者は永遠に白点病を克服できませんし、多くの魚の命が奪われていきますし、そこに付け込んだ悪徳な海水魚ショップに怪しげな“薬”や“治療法”を売りつけられて、経済的な負担も増大し、結局、海水魚飼育を楽しむことも出来ず、ただ苦痛にしかならないでしょう。

私は白点病に関して、私の知る限りで(^_^;;正確な情報を、出来るだけ多くの人々に共有してもらうことで、そんな“白点病地獄”の連鎖を断ち切りれないものか。と思います。それがこのページを作った、私の動機です。

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