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白点三千個[2]
白点病の症状と発症パターン

(2005.12.31)

 

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白点病の症状と発症の条件について、説明します。
病魚が白点病であるかどうかを判断する際の参考にして下さい。

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白点病の症状
  白点病の症状は、以下の4段階に分けて考えると良いと、私は考えています。以下、それぞれの段階別に、発現する症状をご紹介します。
  ただし、以下に紹介する4段階の区分は、白点病に対する理解を容易にするために私が勝手に設定したものです(^_^;;。
一般的に認められたものではなく、またその違いも明確なものではありませんので、その点をご理解いただいた上で、お読み下さいね。
       
    1. 最初期
       
      魚が白点虫に寄生された直後です。まだ体表に白点は確認できないのですが、白点虫が体表粘膜の奥深くへと侵入して行くことによって、魚は体表に痒みを感じるようです。このため、寄生された魚は水槽内のライブロックや底砂などに体をこすり付けるような動作をします。
飼育している魚が上記の動作(体をこすり付ける)をしている場合には、まず、白点虫の寄生を疑って下さい。
場合によってはこの段階で、魚の目やヒレなどに白濁が見られることがあると聞いたこともあります(私自身では未確認ですが)。

またこの時点で、寄生された魚の体力が十分にあり、免疫力も高く保たれていれば、症状はこの段階にとどまり、自然治癒することも多いです。従ってこの段階ではまだ、飼育者が病魚の感染(白点虫の寄生)を確認することは難しいと思います。
(「それじゃ意味がないじゃん!」とか言わないように。笑。この段階で魚の異常行動に気付いていれば、次の段階に移行したときに、白点病の診断を付けやすくなるんですから。(^_^;;)

なお、繰り返しになりますが、この段階(寄生された直後)では、魚体上に「白点」は確認出来ません。寄生した白点虫が魚体上の「白点」として肉眼で確認出来るようになるのは、白点虫の寄生から2〜3日経過した後のことです。(つまり、飼育者が「白点」を確認する2〜3日前から、既に確実に、その魚は白点虫に寄生されていたことになります。比喩的表現ですが、「潜伏期間があった」と言っても良いでしょう。)その点を良くご理解下さい。(詳しくは「[3]白点虫の生活史」の項目を参照して下さい。)
       
    2. 初期
       
      魚の体表に、直径05.mm以下程度(淡水魚の白点病よりも小型です。)の小さな白い点(白点)が、1個〜数個、確認されます。この白点は全身に発現する可能性がありますが、特にヒレの透明な部分などには現れやすいそうです(確認しやすいだけかもしれませんけど(^_^;;。)。
魚は相変わらず、痒がって体をLRなどにこすり付ける動作をしていると思いますが、場合によっては、あまりそのような動作をしない場合もあります。
また、この白点は一般的に、夕方〜深夜・早朝に掛けての時間帯に確認されるケースが多いと言われています。これは周囲の明暗とは関係なく、白点虫の体内時計の日周リズムによるものだそうです。

ただし、「白点」が発現するのは、必ずしもこの時間帯とは限らない場合もあります。
特に海水魚ショップで購入した魚から発症した白点病の場合には、移動による時差やその後の人工的な環境の中で、白点虫の体内リズムがズレている可能性が大きいでしょう。そのため、朝や昼に多くの「白点」が確認出来、夕方から夜間には確認できない。という、逆のパターンになることもあります。

それでも白点の出現時間には、ある規則正しいリズムが確認できる場合が多いと思われます。これは白点虫が魚体を離脱するタイミングを予測するために重要な情報になりますので、単に「白点」が確認出来る・出来ないということを気にするだけではなく、一日の間のどんな時間帯に数多く確認され、どんな時間帯には確認されないのか(もしくは数が減るのか)、よく観察して記録しておくことが大切だと思われます。

海水魚飼育者はたいてい、この段階で、魚の異常に気がつきますが、ただし、いやらしいことに(^_^;;、この段階の白点は、数時間〜半日後には必ず、消えます。たいてい、翌朝には跡形もなく消えているはずです。全く何の対策を施さなくても、必ず消えてしまいます。例えば薬を入れたり、水温を上げたりしても、そのために消えるのではありません。それらとは全く関係なく、白点虫の成長のための自然な過程として、白点は消えるのです。そこを勘違いしてはいけません。

なぜなら、一匹の白点虫が「白点」として魚体の表面に目視確認出来るのは、その白点虫が魚体を離れる直前の、ほんの数時間〜半日程度の間だけだからです。つまり我々は、魚体に寄生して今、まさに魚体から栄養を吸い取っている最中の白点虫を目に見ることは出来ず、彼らが魚体から十分に栄養を吸い取って満腹して、そろそろ魚体を離れようかと言う時になって初めて、そのいわば“後姿”をようやく、目にすることが出来るだけなのです。(あぁ、なんて憎たらしい!笑)
もし白点が消えず、全く同じ場所にずっと留まっているとしたら、それは白点病ではありませんので、リムフォシスティスなど、別の病気を疑って下さい。

なお「最初期」と同様に、この段階で白点が数個にとどまっている程度であれば、特段の“治療”を施さなくても、きちんと餌を与え、水質を正常に保つだけで、自然治癒する(=その後白点が発現しなくなる)ことも多いそうです。
もちろん、もし積極的な“治療”を施すのでしたら、この段階から取り掛かった方がより効果的なわけですから、判断が難しいところではありますが…(^_^;;。

       
    3. 中期
       
      一度消えた(もしくは数が減った)白点が、今度は別の場所に(あるいはやはり同じ場所にも)、もっと数が増えて現れます。
魚は相変わらず、痒がって体をLRなどにこすり付けていると思いますが、場合によっては、既に拒食が始まり、また呼吸が速くなっている場合もあります。

時々、「昨日は1個だったのに、翌日には沢山に増えていた。」という話を聞くことがありますが、その場合にも実は、「昨日の1個」が、今日、沢山に増えたわけではありません。今日の魚体についている沢山の白点の“親”は、実はその3日〜1週間くらい前に、魚体に取り付いていた白点虫であり、「昨日の白点」とは「兄弟関係」ではあり得ても、決して「親子関係」ではあり得ないからです。(詳しいことはやはり、「[3]白点虫の生活史」をご覧下さい。)
ですから「昨日は1個だったのに、翌日には沢山に増えていた。」という人は、実は単に本当の“最初の1個”を見逃していただけのことなんですね。(そしてたいてい、“最初の1個”なんか、見つけられるものではないんですが…(^_^;;)

この後、白点は「消える→現れる→消える→現れる」を繰り返しながら、徐々に数を増やして行き、その白点の数に反比例するように、魚の元気がなくなり、エサを食べないようになり、また呼吸が速く、荒くなり、やがて「後期」に移行します。
       
    4. 後期
       
      白点の数が増し、それと共にもはや「消える」というタイミングが分からなくなります。(個々の「白点」はそれぞれ出たり消えたりを繰り返しているのですが、タイミングの異なる沢山の白点がそれぞれ“点滅”しているので、全体としては常に白点が現れているように見えるのです。)
魚の呼吸は速く、餌を食べず、元気もなくなります。場合によっては目に見える“白点”の有無に関わらず、魚体表面の粘膜が広い範囲で白濁し、また粘膜が剥離してボロボロになる場合もあります。

それでもなお、魚に体力が残っており、餌を食べることが出来れば、そこから持ち直すことも考えられないではありません。しかし体力が低下した挙句、魚が拒食におちいると、その段階からの回復は絶望的と考えた方が良いでしょう。何しろ白点病との闘いは持久戦です。魚体に寄生している白点虫を直接的に殺す薬剤というのはほとんどないので、白点虫に寄生されている間の魚の生命は、魚自身の体力によって支えてもらうしかありません。拒食におちいった魚は、なお数日間、生存を続ける可能性はありますが、ほとんどの場合、死亡してしまうことを覚悟すべきです。

なお、病魚がいよいよ助かる見込みがないと思ったら、出来るだけ早めに水槽からは取り出して、健康な魚からは隔離した水槽(ホスピス?)に入れなければなりません。なぜなら、病魚に寄生していた白点虫は、寄生していた魚が死んでも自分自身まで死ぬわけではなく、むしろ揃って病魚の身体を離れ、やがて一斉に白点仔虫を産出するからです。つまり、白点病で死んだ魚を放置しておくと、その後の水槽の中では、あるタイミングで一度に大量の白点仔虫が産み出される。ということになります。

「白点病で死んだ魚=大量の白点虫製造装置」と考えておきましょうね。白点病の重篤な魚を隔離することは、死んで行く魚のためではなく、水槽に残った他の魚に感染が広がるのを防ぐために、必要不可欠な処理です。
レベルの低い海水魚ショップなどでは時々、死んだ魚がそのまま、水槽内に放置されていることがありますが、そんなショップは「海水魚販売業」ではなくて、「白点虫販売業」だと言っても良いですよ(笑)。

(あぁ、それにしても、白点虫とはなんて憎たらしい連中なんでしょう!しみじみ嫌なヤツらですよね?(^_^;;)

以上が4つの段階に分けた、白点病の症状です。
ただし(最初に注釈した通り)、「最初期」〜「後期」の間に明確な区分はありませんので、白点が数個、見えたと思ったら次の日には死んでいた、ということも、ないではありません(特にエラに寄生された場合など。決して多くはないとは思いますけど(^_^;;)。
また逆に魚に体力があり、免疫力が強い場合には、最初期から死ぬまで、1ヶ月以上の闘病期間を経ることも、決して珍しいことではありません。その辺が白点病の診断と“治療”を難しくしている部分なのですが、白点虫の生活・増殖サイクルを考えると、少なくとも理論上は、以上のような段階を経て、症状が悪化していくものと考えられます。

白点病の発症パターン(発症の条件)
  さて、白点病の症状について理解したら、次には白点病が発症するパターンや、飼育条件について考えます。というのは、様々な条件下で白点病は発生するのですが、その中でもいくつか、特に白点病が発症しやすいパターンがあるからです。これは自分の水槽に白点病を招くリスクが高い条件ということにもなりますから、このパターンを覚えておくことは、白点病の診断に役立つと同時に、その予防にも、非常に役に立つことでしょう。
       
    1. 新規購入の魚が白点病になるパターン
       
      一般にはこのケースが最も多いと思います。
ショップから海水魚を購入して、自宅の水槽に入れたところ、翌日、または翌々日などに、新規導入した魚に白点が発現するものです。

しかしこれには実は2通りのパターンがあって、ひとつは見たまま、新規購入した魚が既にショップの水槽で白点病に感染していた(寄生されていた)という場合です。「症状」の項目に記載した通り、例え白点虫に寄生されていても、最初の数日間は肉眼では「白点」を確認できませんし、また午前中や日中は、白点が確認できないことも多いので、この“潜伏期”に相当する時期に魚を購入してしまうと、ショップの水槽では何の異常もないように見えても(=白点は確認できなくても)、自宅の水槽に導入後、再び白点が現れることになります。(このパターンは非常に多いはずです。)

一方、海水魚ショップの水槽には、毎日のように新しい魚が追加され、つまりは毎日のように、白点病などの病原体に冒されている可能性のある魚が入荷して来るわけですから、よほど新規オープンして間もない店でもない限り、ショップで購入する魚には100%、白点虫寄生(潜伏)の可能性がある、と考えておいた方が妥当です。たとえショップで購入した魚をそのまま自宅水槽に導入して何の病気も起こさなかったとしても、それはたまたま運良く、魚に体力があり、免疫力が高くて、ショップ水槽で感染した病原体に打ち勝った、というだけのことに過ぎない場合が多いのではないでしょうか。
ですから、ショップで購入した海水魚を水槽に導入する際には、必ず、本水槽とは別の臨時のトリートメント水槽で、検疫と治療を行ってから、本水槽に導入することが大切です。

そしてもうひとつのパターンは、実は新しい魚自体はショップの水槽では白点病に感染しておらず、トリートメントタンクでの検疫中にも全く白点病の発症は見られなかったにも関わらず、メイン水槽に導入したとたん(と言っても水槽導入から数日後ですが)、白点病を発症する、というパターンです。
このような事態に遭遇すると我々はしばしば、狐につままれたような気分になる訳ですが、良く考えればそんなに不思議なことでもありません。単に新しい魚を入れる前からメイン水槽に、白点病の病原体(白点虫)が生存(棲息)しており、新たに水槽に入れた新参の魚にとりついただけのことです。

実は白点病については、例えば人間のインフルエンザなどと同様に、一度感染して治癒すると、次には魚体がある程度の免疫を獲得して、白点虫に再寄生されにくくなったり、あるいは激しい症状に至らずに治癒してしまう可能性が高くなることが確かめられています。(ただし残念ながら、免疫を獲得しても、「一度白点病に罹った魚は、もう二度と白点病に罹らない。」ということではないのですが(^_^;;。)
このため、例え水槽の中に白点虫が棲息していたとしても、以前からその水槽の中に住んでいて、ストレスもなくエサも沢山食べていた先住の魚たちには大きな問題とならず、多数の「白点」も現れないまま(従って飼育者も気付かないまま)微妙なバランスの下にいわば“白点虫との共存”が成立してしまう可能性も考えられます。

このような水槽に新しい魚を導入してしまうと、新しい魚はその水槽の白点虫に対する免疫がありません。また、採集されてから後のショップの水槽での生活、異動のストレスなどで、すっかり体力が落ちている場合がほとんどです。免疫もなく、ストレスによって体力も低下している、その上水槽に移動する際に使用された網などで魚体表面の粘膜を傷つけられている“新参者”の魚は、水槽の中で息を潜めて暮らしていた白点虫にとっては、格好の“ごちそう”ということになるでしょう(飛んで火に入る夏の魚?(^_^;;)。白点虫は一気に寄生して、白点病の症状を発現させるのです。

なお、新しい魚を追加しなくても、例えばイソギンチャクやサンゴを追加した、あるいは、ライブロックを追加導入した、という場合にも、水槽内に白点虫を持ち込んでしまう可能性があります。たった1滴の水滴の中にも、何十、何百という白点仔虫が潜むことが出来るからです。ショップ水槽の生体には非常に高い確率で(および自然の海で採取した生体でも何割かは)、白点虫が寄生、もしくは卵(シスト)が付着している、と考えておいた方が良いと、私は考えていますから、魚に限らず、エビでもイソギンチャクでもサンゴでも、新しい生体や飼育水、ライブロックなどを追加する場合には、くれぐれも慎重に行うことが求められますね。メンドクサイですけど(爆)。(^_^;;
       
    2. 新規購入の魚を水槽に入れたところ、元々水槽にいた魚が白点病になるパターン
       
      さて、白点病にはさらに不可思議な発症のパターンがあります。新しい魚を水槽に追加したところ、新しく追加した魚には何の変化もないのに、今まで元気に暮らしていた先住の魚たちに白点病が発症する。というパターンです。

非常に不思議な気分になるとは思いますが、やはりこれも原因は(2つ考えられますが)明快です。新しく導入した魚が水槽に白点虫を持ち込んだか、もしくは、元々水槽の中に潜在していた白点虫が活性化したか、そのどちらかです。

新しく導入した魚が白点虫を持ち込んだと考えると、新しい魚に白点病が発症しないのが不思議に思われるかもしれませんが、これは単に、新しい魚に体力があり、症状が悪化しないで自然治癒しただけのことでしょう。「[1]白点病・極私的概論の中の「白点病とは」の項目でも述べたとおり、白点病は病魚に体力があれば、しばしば、自然治癒してしまいますから、新規導入魚がいわば白点虫の“運び屋”になっただけで、自分自身はたいした症状も出ないまま、周囲の魚に感染する、ということも、非常にしばしば起こり得ます。

また例え新規導入魚が白点を持っていなくても、水槽の中に白点虫が生息しており、微妙なバランスで“共存”が成立していた場合には、新しく魚を追加したことによってそのバランスが崩れ、水槽内の弱い魚から順番に、白点病の症状が悪化して発現する、ということも考えられます。

新しい魚を追加することは、新しい魚自身にとってはもちろん大きなストレスになるのですが、狭い水槽の中に見ず知らずの同居者が増えるわけですから、先住の魚たちにとってもまた、新たな大きなストレスの原因になります。新しい魚が追加されて、先住の魚がストレスを感じると先住の魚の免疫力が低下して、それ以前には症状が抑えられていた白点病の症状が、一気に悪化して白点が発現するのです。新しい魚を導入することは、新しい魚とってだけではなく、常に、先住の魚にとっても、白点病のリスクが高まることを理解しましょう。
       
    3. 飼育水温の急激な変化(特に低下)があった後に白点病が発生するパターン
       
      1.2.はいずれも、新しい魚を水槽に入れた際に白点病が発症するパターンでしたが、例え新しい魚を水槽に入れたりしなくても、突然、それまで元気だった魚が白点病の症状を示す場合があります。その中で最も多く、最もリスクが高いのは、激しい水温の変化があった後、特に、水温が低下した後です。

これにも原因は2つ、考えられますが、前提としては共に、水槽内に既に白点虫が棲息しており、微妙なバランスで“共存”していた水槽であることが条件になるでしょう。しかし、実は一度白点病が発症した水槽から白点虫を完全に駆逐するということは、厳密には非常に難しい可能性があると思いますので、海水魚タンクのかなり多くが、実はこの「微妙なバランスの“共存”水槽」である。ということも考えられるでしょう。(もちろん、可能性の話なので、定量的な検証は出来ていないのですが…(^_^;;)

で、そのようなタンクの水温を一気に、例えば1日で2℃以上も、変化(特に低下)させたとしたら、どのようなことが起きるでしょうか。
魚は衣服を着けておりませんので、2℃の水温変化はダイレクトに影響を及ぼします。まず人間でも同じことですが、急に寒くなれば(あるいは暖かくなっても同じですが)風邪をひきます。それと同じことで、水温が急激に変化したことで水槽の中の魚は体調を崩し、免疫力、抵抗力が弱まってしまいます。その結果、それ以前には抵抗出来ていた白点虫の感染力に抵抗することが出来なくなり、寄生→発症、となるのです。

また、飼育水の水温が下がる場合には、それによって飼育水中の溶存酸素量が高まります(水槽の中の海水に、酸素がより沢山、溶け込むようになる。)。
飼育水中の溶存酸素が高まりますと、酸素不足によって休眠していた白点虫の卵(シスト)が休眠から目覚めて活動を再開し、数日の後に沢山の白点虫の仔虫(一つのシストから100〜200匹の仔虫が産まれます)を放出すると言われていますので、水温低下した後の水槽の中には、一気に、無数の白点仔虫が泳ぎ回ることになる可能性があるでしょう。

このように、飼育水の水温が一気に下がった水槽では、まず魚の体調が崩れて抵抗力が弱まり、そこに活性化した白点虫の卵(シスト)から孵った白点仔虫が襲い掛かるという、2つの原因によって、それまで健康に暮らしていた魚でさえも、白点病を発症してしまうのです。まさに“泣きっ面にハチ”というところでしょうか(^_^;;。
       
    4. 水質が悪化している水槽で白点病が発症するパターン
       
      さて、新しい魚を追加しなくても、それまで元気(?)だった魚が発症するパターンが、もうひとつあります。それは飼育水の水質が悪化した場合です。

この原因は説明するまでもないでしょう。飼育水の水質が悪化したことによって飼育魚の体調が崩れ、寄生虫(=白点虫)に対する抵抗力が衰えて寄生→発症するのです。「微妙なバランスの“共存”水槽」では、中で生活する飼育魚の体調が崩れたり、ストレスが強くなったりするとたちまち白点虫の勢力が強まり、白点病の症状が顕在化します。このため、飼育水の水質には常に清浄に保つことに注意する必要があります。

なお、水質悪化がなくても、例えば飼育魚に大きなストレスが与えられただけで、飼育魚が体調を崩し、白点病を発症することがあります(大きな魚との混泳によってイジメが始まる、など)。飼育魚への過大なストレスとなる原因としては、あまりにも多くの条件がありますので、ここには書ききれませんが、とにかく、飼育魚にストレスを与えれば白点病になるリスクは高まる。と、そのことは理解しておいて下さい。
       
    5. 底砂やLR、濾材の掃除や換水の後に白点病が発症するパターン
       
      新しい魚やその他の生体を追加したのでもない、水温にも大きな変化は与えていない、まして水質は清浄に保たれている、それでも、やはり白点病が発症することがあります。それは底砂の掃除や濾材の掃除、また、LRの移動などで底砂を巻き上げた、あるいは換水した、などの場合です。飼育者の経験上、このパターンの発症も非常に多いようです。

この場合に白点病が発症する仕組みを、明確に説明した文献やWEB上の記事などを、私はまだ見たことがありませんが、私は個人的には、3.の場合と同様、水槽内の白点虫の卵(シスト)へと酸素供給されたことによって、卵(シスト)が再活性化し、沢山の仔虫が放出されたことが主な原因ではないか。と考えています。(またもちろん、水槽の大掃除や換水などが、飼育魚に大きなストレスを与えているとも考えられます。)

この点についてはのちほど、「[3]白点虫の生活史」の項目で再び触れますが、白点虫の卵(シスト)が活性化し、仔虫を放出するためには、卵(シスト)の周囲の環境に、ある程度の溶存酸素量が必要であることが確認されています。ところが例えば水槽内の底砂やLRの中とか奥とか、あるいは濾材の間とか下側とか、そういう環境では飼育水の水流が届かず、結果的に周囲の溶存酸素量が十分に確保されるとは限りません。そこで、そのような環境に入り込んでしまった白点虫の卵(シスト)は活動を停止し、そのまま、周囲の溶存酸素量が増大するタイミングまで、長い眠りに入ってしまう可能性があります。そこへ、例えば底砂の掃除、LRの移動、あるいは濾材の交換や換水などで、新鮮な飼育水が供給されると、今まで休眠していた白点虫の卵(シスト)が活動を再開し、沢山の白点仔虫を放出することになったとしても、何の不思議もないでしょう。

実は以前から、海水魚飼育者の間では、「底砂や濾材の掃除をするとその後に白点病が発症しやすい」ということが経験的に伝えられ、それは単純に「底砂の中に白点虫が潜んでいるからだ。」と理解されて来ましたが、実際の仕組みがそんなに単純な話であるはずがないと、私は考えてきました。「底砂の中に白点虫が潜んでいる」というだけでは、白点虫が長期間に渡って底砂の中で生命を保つことが出来る理由が分からないからです。
これに対して、“掃除”によって卵(シスト)に酸素供給され、それによって休眠していた卵(シスト)が目覚めて(活性化して)、仔虫が放出されるのだ。と考えることは、過去の海水魚飼育者の経験を、最も良く説明するのではないでしょうか。

以上が、よくある白点病の発症のパターンです。もちろん、これ以外での条件、これ以外でのパターンでの発症もあるとは思いますが、一般的には、上記のいずれかのパターンに分類される条件下(あるいはその組み合わせ)で、発症することが多いでしょう。共通点はいずれも、飼育環境に何らかの変化があった時に、白点病が発症するという事であり、逆に言えば、飼育環境に特段の変化がない状態であれば、白点病は発症しにくい。とも言えるでしょう(ただし、魚を長期飼育していて、上記のいずれかの飼育環境変化を一つも起こさない。というのは、不可能な事ではありますが…(^_^;;)。
それでも、白点病の予防(および再発予防)を考える場合には、このパターンを認識しておくことが、たいへん重要になると思います。

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