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お天道様と海老
(おてんとうさまとえび)〜 海老の腰が曲がっているわけ 〜
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むかし、海老の腰は今のように曲がってはおらず、まっすぐに伸びていた。色も今のように赤くなく、綺麗な青色をして、すらすらと、真っ直ぐ前に泳いでいた。 さてこうなると。 もともと大食らいの海老は腹が減ってたまらない。何か食えるものはないかと海の中をあちらこちらと捜しまわったが、藻屑ひとつ落ちておらん。海という海の中を捜した後で家に帰ると、海老はあんまり腹が減りすぎて、頭がくらくらしてしまった。 と、その時、海老のお腹のあたりで、何かもそもそと動く気配がする。海老は「やれ嬉しや!」とひっつかまえて、がばりとかじりつくと、それはなんと、海老が腹に抱えていた自分の子供なのだった。 海老の周りには誰も寄りつかないので、海老はまさかそんなあさましい姿を見られてはいないと思っていたのだが、この様子を遠い空の上から見ていたのがお天道様だった。その非道な仕打ちに怒ったお天道様は、空も張り裂けるような大声で海老を怒鳴りつけた。 お天道様にこう言われると、さすがの海老も我が行いを恥じ、顔から体から、すっかり真っ赤になってしまった。 お天道様も海老のこの姿を見て流石に哀れをおぼえたのか、もうそれ以上は叱ることもなかったが、それでも結局、海老の大食らいは直らなかった。それで、今ではお天道様に顔を合わすことを畏れて、昼間の間は岩の陰に隠れており、もっぱら夜に出歩くようになったということだ。 おしまい |
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