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母子蜘蛛

(おやこぐも)

〜 蜘蛛の母子とお釈迦様のおはなし 〜

 

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 あるところに、子供を背負った母蜘蛛がいた。
 母子はもう何日も食べ物を捜して歩き回っていたが、蟻の一匹さえ見つけることができなかった。

 「このままでは二匹とも飢え死にしてしまう。」
 そう思った子蜘蛛は、背負われていた母蜘蛛の首を一度、しっかりと抱きしめると、そのままむしゃむしゃと、爪の先まで食べてしまった。
 「先の短い母が生き残るより、まだ若い自分が生き残った方が良い。」
 そう考えたのである。
 こうして、子蜘蛛は生き延びることが出来た。

 遠い天上でこの様子を見ておられたお釈迦様は、子蜘蛛に食われた母蜘蛛をたいそう哀れんで、遥か雲の上から手を合わされた。そして同時に、子蜘蛛をお赦しになった。

* * *

 また別の時、別の場所に、別の母子の蜘蛛がいた。
 同じ様に飢えて、死にかけていた。

 すると今度は母親の方が、背負った子供をしっかりと抱きしめた後、そのままむしゃむしゃと、爪の先まで食べてしまった。
 「まだ幼い子供が生き残っても、いずれ他の蜘蛛に食べられてしまう。それならば自分が生き残って、また子供を作った方が良い。」
 そう考えたのである。
 こうして今度は、母蜘蛛が生き延びることになった。

 お釈迦様は今度もまた、遠い天上からこの様子をご覧になり、母蜘蛛に食われた子蜘蛛をたいそう哀れんで、手を合わされた。そして再び、今度は母蜘蛛をお赦しになった。

おわり

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