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ホビーアクアリストのための
行動ガイドライン試案

〜 人間社会と地球環境に対して“責任あるアクアリスト”となるために 〜
(2008.01.01 UP)

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さて、弊サイトではかねてから、
書を捨てて磯に出よう」だの、
生き物の“玩具”“雑貨”“消耗品”扱いに、反対の声を上げましょう!」だの、
人工繁殖生体の安易な自然放流に断固反対します」だのと、
アクアリウム関連業界とアクアリストに対する提言やら問題提起やら、
色々と小うるさい“悪口(^_^;;”を書き連ねて来ているのですが(笑)、
現在までのところでは、
そのような弊サイトの主張は、サイトのあちこちにバラバラに転がっている状況で、
その全体像をまとめて見られるページがありませんでした。
そこで、まあ繰り返しにはなるのですが、この辺りで一度、それらの主張を整理して、
いわば、
ホビーアクアリストのための行動ガイドライン(試案/私案)というような形に
まとめてみようと思いました。

以下に提案する「
ガイドライン」は、「試案/私案」と書かれているように、
私の全く個人的な考えに基づいた試案に過ぎませんけれども、
できればこれを“たたき台”に、あるいはせめてきっかけにして、
私自身も含めた全てのホビーマリンアクアリストが、人間社会や地球環境の将来に対する責任を自覚して、
ホビーアクアリウムの発展が社会の持続性を高めると共に、
人間社会と自然環境との共生の可能性を高めることに貢献するためにはどうしたら良いのか、
ご一緒にお考えいただければありがたいと思います。

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ホビーアクアリストのための
行動ガイドライン(試案)

− 私案第1号 2008.01.01 −

   
基本的態度
1. 私たちは、自宅の水槽を「自然の海や河川等へと繋がる“窓”」と捉える、ナチュラリスト(自然愛好家)を目指します。
2. 私たちは採集および飼育生物の生命を尊重し、その尊厳に対する敬意を持って取り扱います。
3. 私たちは野外での採集や水槽での生物飼育を通じて、自然の海や河川などの環境や生態系の、「美」や「不思議」や「素晴らしさ」について学び、その破壊と保全とに関心を持ちます。
4. 私たちは私たちの趣味活動が自然環境と生態系の破壊を伴うものであることを十分に認識し、常に自制と反省とを忘れずに行動します。
環境負荷を軽減するための努力
5. 私たちは自分自身の飼育スキルの向上に努め、スキル不足のために殺してしまう生体の数を減らすことに、全力で取り組みます。
6. 私たちは生体の飼育環境の適正化と、長期飼育の実現とに努め、生体の無理な詰め込みや浪費を行ないません。
7. 私たちは飼育生体の野外流出が重大な自然環境破壊を引き起こすことを自覚し、野外流出事故の防止に万全を期すと共に、飼育生体の投棄や自然放流を行いません。
8. 私たちは特に野生希少種の保全問題に強い関心を払い、法的規制の有無に関わらず、希少種ばかりをみだりに買い求めるような飼育スタイルに反対します。
9. 私たちはホビーアクアリウム産業における消費者としての立場に伴う責任を受け入れ、私たちの趣味とホビーアクアリウム産業の活動が自然環境に与える負荷を軽減するために必要なコストを、適正に負担します。
10. 私たちは飼育生体の採取方法や生産・流通体制に注意を払い、違法採集・違法販売はもちろん、薬物採取や乱獲等の、破壊的な漁法や流通方法によって販売されている疑いのある生体を購入しません。
11. 私たちは可能な限り人工繁殖生体や養殖ライブロックなどの購入を優先し、自然環境からの生体採取そのものを減らすことを心がけます。
環境保全の推進に積極的に貢献するための努力
12. 私たちは採集や飼育を通じて知り得た野生生物や自然環境・生態系の「美」や「不思議」や「素晴らしさ」を、私たちの周囲に生活する人々に積極的に伝え、人々の興味と関心を喚起することに努めます。
13. 私たちは常に、サンゴ礁や身近な河川などを初めとする自然水域の環境保護・環境保全に関わる活動に関心を持ち、出来ればこれに参加し、またはこれを支援する活動に協力します。
普及と啓蒙・啓発のための努力
14. 私たちは、この「行動ガイドライン」を自分の周囲のアクアリストにも伝え、少しでも多くのアクアリストが自然の海や河川の環境の破壊と保全に関心を持ち、この「行動ガイドライン」を尊重する“仲間”が増えるよう、努力を続けます。
15. 私たちは私たちが利用するアクアリウムショップや流通業者に対しても、私たちの考え方を伝え、アクアリウム産業全体に対して、環境負荷の軽減への努力を求めます。


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弊サイトのこのような主張が、全ての方に賛同いただけるとも思いませんし、
また逆に、私の主張が「鼻に付く」とか、「身の程知らず/不遜だ」とか、
あるいは「偽善だ」と感じられる方もいらっしゃるのではないかと思います。

また、「自分は楽しい趣味の情報を求めているのだから、
そこで今更、説教じみた話など聞きたくもないし、したくもない。」と仰る方も、
大勢いらっしゃることでしょう。

それはそれで私から特に反論することも出来ないのですが、
そのようにお感じになった方には是非一度だけでも、
「これからのホビーアクアリストはどのように行動すべきか。」について、
ご自身でも考えてみていただきたいと思います。

その結果として、「今のままで少しも変えるべき所はない。」と言うことでしたら、
私とその根拠について、議論させていただければありがたいと思います。

また、少しでも変えていかなければならない、あるいは変えた方が良いと思う部分があるのでしたら、
それはどこで、どう変えたら良いのかについて、意見交換させて下さい。

あるいは、
私の「私案」では、「ここが足りない。」とか「ここは間違っている。」ということでしたら、
是非私に教えていただきたいと思います。
この「ガイドライン案」はあくまでも私の「私案」であり、「試案」に過ぎないのですから、
多くの方と議論して、どんどん良いものにしていくことが出来れば、これ以上の喜びはありません。

( と、まあ、私が今までこんなことを書いて、議論が盛り上がったためしはないんですけどね(^_^;;。 )

それでも私は少しでも多くのアクアリストとその関係者が、
ナチュラリストとして社会に認められて、
その知識やスキルが社会的に活用されるようになることを望んでいます。

そのために、出来るだけ多くの“声”を上げて下さい。

私のサイトへの書き込みでも構いませんし、
ご自身のサイトやブログなどでご意見を公開していただければ、
より大きな影響を与えられるはずです。

どうぞよろしくお願いします。

 

2008.01.01

「放蕩息子の半可通信」
作成・管理者:放蕩息子

 

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参考:水槽飼育が育てる“強い”ナチュラリスト


水槽内での水生生物飼育は、陸上生物飼育に比べ、
飼育生物の糞尿などの排泄物を系外に廃棄することが難しい、
半閉鎖系のシステムである。
そのため、必然的に、
排泄物や残餌の処理までを包括した複合的なシステムを構築する必要があり、
腐食連鎖を含めた食物連鎖や生態系の学習や理解に、最適なモデルと言える。
(2008.03.09 追記)

 

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以下のページは、2004年2月の開設当時より、
ホビーマリンアクアリウムと環境・生態系保全との問題に関して、
弊サイトが問題提起や提言などを行って来たページです。
その時その時のトピックスに対応して作成したページですので、
特に体系立ったものになっていませんが、まとめてご紹介いたします。

 

 
   
 

 “生物玩具”やアクアリウム界の“問題商法”に関するページ 

   
継続アピール  〜 生き物の“玩具”“雑貨”“消耗品”扱いに、反対の声を上げましょう! 〜
 
[主な内容]
      オカヤドカリをはじめとする“生物玩具”に反対する宣言
      アクアリウム関連の“問題商法”の具体的な事例の紹介
      飼育者/流通/発売元/マスコミに対する弊サイトからの“お願い”
      “生物玩具”に反対する他のWEBサイトのご紹介
   
 

 人工繁殖生体の自然放流問題に関するページ 

   
飼育生物の放流について  〜 飼育生物を放流することの是非 〜
 
[主な内容]
      飼育生物を自然放流した場合の問題点の指摘
続・放流について  〜“ニモ”放流」への私的評価と提言 〜
 
[主な内容]
      岡山理科大学専門学校によるクマノミ放流に関する評価と提言
      日本魚類学会「放流ガイドライン」、日本サンゴ礁学界「移植ガイドライン」の紹介
      「自然の海へと繋がる“窓”としてのアクアリウム」や、「エコ・アクアリスト」のコンセプトの提案
      愛媛県立長浜高等学校「ながこう水族館」によるクマノミ放流の評価
クマノミ繁殖を行う人々への提言  〜 誤った善意による自然破壊を防ぐために 〜
 
[主な内容]
      個人愛好家によるクマノミ放流に関する評価と提言
      ホテルの集客に利用されているクマノミ放流活動の実態の紹介
      TV局による恣意的な情報操作/報道姿勢に対する批判
放流反対緊急アピール  〜 人工繁殖生体の安易な自然放流に断固反対します 〜
 
[主な内容]
      人工繁殖生体を安易に自然放流することに反対する宣言
   
 

 薬物採集・乱獲など、アクアリウム産業の問題点等に関するページ 

   
観賞用海水魚大量養殖の影響について
 
[主な内容]
      人工養殖の海水魚が、観賞魚市場に大量流通することの影響と懸念
      イソギンチャク乱獲の実情
      アクアリストの心構えについての意見
何のための人工繁殖か
 
[主な内容]
      繁殖目的の自然生体採取に対する苦言
磯採集の是非について 〜 アームチェア・ナチュラリストへの抗弁 〜
 
[主な内容]
      アクアリストが実際に採集のフィールドに出ることのすすめ
      ショップでの“歩留まり”や“隠れたフロー”についての伝聞的情報
事前予防アピール  〜 「ファインディング・ニモ2」の制作・公開に反対します 〜
 
[主な内容]
      カクレクマノミやイソギンチャクの乱獲を引き起こした映画の影響
      事前に予測されていた環境破壊への予防策を怠った配給会社とマスコミの責任
   
 

 2008年の『国際サンゴ礁年2008』に関するページ 

   
『国際サンゴ礁年2008』に向けての提言
 
[主な内容]
      『国際サンゴ礁年2008』を契機と捉えた、ホビーマリンアクアリストとアクアリウム業界に対する提言
マリンアクアリウムに関係する皆様に対する、弊サイトからの具体的なお願い(『国際サンゴ礁年2008』に向けての提言[2])
 
[主な内容]
      上記の「提言」に沿った、業界関係者への、より具体的な「お願い」(一部工事中)
サンゴ礁年漂流記(弊サイト「放蕩息子の半可通信」別館)
 
[主な内容]
      私、放蕩息子が、『国際サンゴ礁年2008』に関する様々な行事やシンポジウム等に参加した記録と感想
      「シアン漁」など、サンゴ礁の保全に関係する、様々な情報提供

 

 


【 追記 2007/02/01 】

最近、日本動物園水族館協会(日動水/JAZA)の公式WEBサイトのトップページに、世界動物園水族館協会(WAZA)が発表した「世界動物園水族館保全戦略2005」の抄録が掲載されたことを知りました。一般への公開を前提に、社会的存在意義を厳しく問われる動物園・水族館の活動と、個人の趣味で行なわれるホビーアクアリウムとでは、その理念も倫理基準も異なったものが要求されるとは思いますが、このページで提案している「ホビーアクアリストのための行動ガイドライン(試案)」と、WAZAが掲げる「世界動物園水族館保全戦略2005」とでは、その根底に流れる精神は共通しているものと確信しています。

また、かつて個人としての情報発信手段がほとんど無かった時代であればいざ知らず、インターネットというコミュニケーション手段の発達を通じて個人の情報発信力が比較的に増大した現代にあっては、一個人の趣味活動に過ぎないマリンアクアリウムであっても、十分に、社会教育や生物研究に貢献し得る可能性が拓かれて来たと考えられます。
そうであれば、かつて動物園・水族館が、娯楽/レクリエーション面での機能のみならず、保全・研究・教育などの諸機能を充実して発展した来たのと同様に、我々のホビーアクアリウムもまた、それらの機能を充実させて行くべきであろうし、さらには、それら諸機能の充実なしには、これからの時代において、個人の趣味として野生生物の採集&飼育を行なうことに、社会的承認を獲得・維持することは難しいのではないでしょうか。
そうした意味でも、我々ホビーアクアリストが、WAZAの「世界動物園水族館保全戦略2005」から学び得るものは、非常に大きいものと考えます。

基本、英文の翻訳ですので、文章がやや読みにくい部分はあるかと思いますが、「ホビーアクアリストのための行動ガイドライン(試案)」をご理解いただく際の資料の一つとして、是非ご覧下さい。

        日本動物園水族館協会 http://www.jazga.or.jp/        
        「世界動物園水族館保全戦略2005」抄録 http://jdbv3.jazga.or.jp/siryo/WZACS_short_jpn.pdf        


なお、上記の「世界動物園水族館保全戦略2005」の抄録などをご覧になって、これからの時代の水族館のあるべき姿について興味と関心を持たれた方は、合わせて是非、東海大学出版会から発行されている二冊の書籍、『水族館学』および『水族館の仕事』をお読み下さい。
水族館学』は、「単なる展示・娯楽“施設”ではなく、博物館であり、社会教育・研究のための“機関”としての水族館とは、どのような存在であるべきか」について、幅広く、かつ体系的に論じた、本邦では初の(そしておそらく現在まで唯一の)書籍であり、『水族館の仕事』は、そうした「博物館であり社会教育研究機関としての水族館」としての“水族館活動”の実態を、実際の現場で活躍している研究者や飼育員自身が、一般に分かりやすく紹介した書籍です。
いずれもいわゆる「ガイドブック」の類ではありませんので、「水族館好き」を自認する方の中にも楽しめない方はいると思いますが、水族館と言う“施設”に出掛けて展示水族を観覧するだけでは飽き足らないと感じるような方にとっては、こんなにワクワクする本は他にありません。水族館という存在の魅力を改めて確認出来ると共に、水族館の将来に対する期待が、ますます高まるのを感じることでしょう。
またもちろん、このページの「ホビーアクアリストのための行動ガイドライン(試案)」を作成するにあたって、これらの書籍で語られている「水族館のあるべき姿」が参考になったことは、言うまでもありません。

        水族館学 http://www.press.tokai.ac.jp/bookdetail.jsp?isbn_code=ISBN978-4-486-01591-8        
        水族館の仕事 http://www.press.tokai.ac.jp/bookdetail.jsp?isbn_code=ISBN978-4-486-01770-7        



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よろしくお願いします。


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